空冷エンジンの楽しみ方【ヨタハチ 3】ポルシェのシリンダーを流用? 足はミニ用? アイデア満載のモディファイ|1969年式 トヨタ スポーツ 800

大きくカーブを描いたヨタハチ特有のダッシュボードから、まるで飛行機のコクピットにいるかのような錯覚を覚える車内。おろし金を流用したフットレストがユニーク。

       
大型バイクとほぼ同じエンジン構造と排気量で、今となっては軽自動車に毛が生えた程度と思われてしまうヨタハチ。
衝突安全性が重視される今では決して考えられない580kgという驚異の車重は、空冷エンジン&コンパクトボディならでは。
今となっては純正パーツはおろか、専用のチューニングパーツを見付けるのはほぼ不可能に近い状況だがトヨタ車だけに止まらず、さまざまなアイテムを流用することで、そのスポーツ性能をさらに磨き上げることに成功。
独自の理論やアイデア満載のモディファイによって、ヨタハチ最速の座を狙う!

【1969年式 トヨタ スポーツ 800 Vol.3】


【2】から続く

「この仕様になるまで異なるピストン径やシリンダーの材質など、いろいろ試しました。そんな時、eBayで見つけたのが、QSC製の4気筒ポルシェ用のアルミシリンダーです。アルミ製で軽量ですし、ドイツ車特有のニカジルメッキも魅力でした。使用していたφ92mmピストン用だったため、何とかなるかと思い、あまり深く考えずに購入したのですが、小加工だけで装着することができました」とオーナー。

 アルミシリンダー導入の理由は、主に軽量化にある。さらに、エンジン内部可動パーツもオーナーがこだわった部分で、バルブはINφ41mm/EXφ36mmでビッグバルブ化。コッター&リテーナーはホンダのバイクVTR10
00F用を使っている。また、バルブスプリングをダブルからシングル化することなどで、エンジンはノーマル比約3分の2まで軽量化を実現。もちろん、これらのパーツが無加工で装着できるはずはなく、加工すれば装着できるという保証もない。それでも何とかなるだろうと購入して試してみるという姿勢は、旧車オーナーならずとも見習いたいところ。これらのバイク用パーツを流用するため、バルブシートの入れ替えやガイドの打ち替え、バルブ形状に合わせた燃焼室加工を行った。また、キャブレターはSUツインやウエーバーなども試した結果、現在はその特性や独特の音にほれ込み、ケーヒンFCR41を愛用している。

 ヨタハチの弱点として知られるリアデフには、アルミ製と鋳鉄製の2種類のデフケースが存在する。どちらかが弱いわけではなく、どちらも同じようにトラブルが発生する。そのため、岡本さんはアクスルハウジングを加工してオイル容量をアップ。さらにオイルの片寄りを防止するバッフルも追加している。また、現在の技術で製造されたベアリングを使うことで、トラブルの発生はかなり抑えられたそうだ。


>>【画像26枚】追加メーターに加えナビやオーディオなど、年式は古くても使い勝手は遜色なし!



>> フロントブレーキは吉良自動車オリジナルキットでディスクブレーキ化。抜群の利きとコントロール性に大満足だとか。





>> カヤバのクラシックミニ用8段調整式ショックアブソーバーを装着。若干の長さ不足のため、ステンレスのワンオフステーで解決する。





>> オイルクーラーはオートバイから流用。上部には温度が分かるステッカーを貼っている。





>> 電気式オイルポンプは、オイルクーラーに循環させるために追加。






>> パイピングの途中に追加されたコックはオイル排出用。ポンプを作動させてコックを開ければ、オイルを排出できる。これでオイル交換が超簡単に。


1969年式 トヨタ スポーツ 800(UP15)


SPECIFICATION 諸元
エクステリア:オールペイント(ベージュ系) 
エンジン: 2U型改970cc仕様(ボアφ92mm×ストローク73mm、圧縮比9.0)、JUN製カム、ビッグバルブ(INφ41mm / EXφ36mm、ステム径φ6 / 7mm)、バルブスプリング(ダブルからシングル:KP用強化)、ホンダVTR1000F用リテーナー&コッター、CP製φ92mmワンオフピストン 
吸気系:KEIHIN FCR 41(メイン180、アイドル55、ニードルEMU3段目 / ELU3段目、加速 ポンプBoyesen quickshit3調整式2個)、ホンダVTR1000用キット 
排気系:吉良自動車製等長ステンレスマフラー 
点火系:pertronix製MR-LS1(ポイントレス)、ICオルタネーター 
冷却系:オイルクーラー(外付けオイルポンプ強制循環式) 
燃料系:電磁式燃料ポンプ 
駆動系:リングギア&サイドベアリング変更(ファイナル3.3)、アクスルハウジング加工(油量アップ、バッフルプレート装着) 
サスペンション:(F)カヤバ製8段調整式ショック (R)カヤバ製8段調整式ショック、パブリカセダン用リーフ、トルクロッド追加、スタビライザー(φ17mm)追加、F / Rともポリアセタール&硬質ウレタン製ブッシュ
ブレーキ:(F)吉良自動車製ディスクブレーキキット
インテリア:ナルディ製ウッドステアリング、シンプソン製5点式ハーネス、ヘッドレスト追加、吉良自動車製4点式ロールケージ
タイヤ:ヨコハマ アドバン ネオバ155 / 70R13
ホイール:カンパニョーロ マグ 13×5J(PCD110に変更)



【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年11月号 vol.018
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 トヨタ スポーツ 800(全4記事)

関連記事:空冷エンジンの楽しみ方

関連記事: スポーツ 800



【1】【2】から続く

text : SHINYA KUSHIURA/串浦愼哉 photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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