6リッターのV12エンジンの衝撃。「勝つべくして勝った」R382|日産R382 vs ポルシェ917【2】

ウイングの装着が禁止されたレギュレーションに合わせ、ボディ形状全体でダウンフォースを得ようとしたR382のフォルム。前モデルR381のスタイルからは隔世の感がある。

       
【1】から続く

【特集:日産vsポルシェ 日産R382 vs ポルシェ917 vol.2】

 R382が初めて姿を現した(させられた?)のは、1969年夏の谷田部試験路における開発テストだった。ひそかに潜入した自動車誌のカメラマンがスクープしたもので、それまで進化型のR381で日本グランプリを戦うものと推測していた関係者にとっては大きな衝撃だった。

 そして、開発関係者以外は知らなかった事実、搭載するV12エンジンが5リッターでなく6リッターだったという衝撃だ。これはR382の存在にも増して強烈な新事実の発覚だった。

 1分44秒77。これは1969年日本グランプリで北野がマークしたポールタイムだが、5リッターのトヨタ7、4.5リッターのポルシェ917に4秒近い大差をつける唯我独尊状態。もはや信頼性のかけらもないアメリカンV8勢は、完全に蚊帳の外に追いやられていた。

 シャシー作りはオーソドックス。とくに冒険する必要もなく、富士の30度バンクに対応するためフルモノコック構造は避けた。というより、R380、R381で実績のある手法の延長線上でシャシー作りをとらえていた。

 ウイングを禁止したレギュレーションに合わせ、ボディ全体を一枚のウイングと考える空力対策も斬新だった。同様の考え方は、ポルシェが1970年デビューさせる917Kのボディ形状にも見ることができた。

 その一方で、エンジンは念が入っていた。当初から6リッター仕様を前提に置いた上で、R381に5L仕様を積んで基礎開発。すぐに5リッター改の6リッター仕様を作ると同時に、グランプリに合わせて正規の6リッター仕様も新設計するという徹底ぶりだった。ある意味、勝つべくして勝った車両でもあった。

【画像8枚】自動車誌のカメラマンによるスクープであらわになったR382は、勝利のために徹底的に鍛え上げられた車両だった


>>視認性を重視したメーターレイアウト。操作系も考慮された。


>>エンジンは6リッター V12 DOHCのGRX-Ⅲ型を搭載。グランプリ直前のパワーチェックではどのエンジンも590psを超していたというから強力なパワーユニットだ。次期モデルR383もこのエンジンを搭載した。



【3】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産R382 vs ポルシェ917(全3記事)

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tete&photo:Akihiko Ouchi/大内明彦

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