手放すことができなかった愛機。プライベートでもワークスマシンの速さに絶対に負けたくない|日産 サニー クーペ【2】

B310サニーは手放すことができなかった愛機で、いつか再び復帰する日を夢見て所有し続けた

       
岡山県倉敷市で、当時はドライバーとしてレースに参戦し、現在もステアリングを握りながら、プライベートチューナーとしてA型エンジンのチューニングを行なっているオーナー。サニーユーザーの間では、かなり有名な存在だ。現在も、速くしたい一心でチューンナップを続けて進化するB310は、エンジンはもちろん、ボディからブレーキまで、そのスペックはとてもプライベーターが仕上げたものとは思えない。

【珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る 日産 サニー クーペ Vol.2】

【1】から続く

 そんなスゴ腕プライベーターのオーナーのレース活動歴を少し紹介すると、まずレースデビューが1980年の中山サルーンカーレース。友人と二人、B210サニーを自力でレースカーにチューニングして参戦したのがこのレースだ。この時のクルマづくりは、地元岡山にあるOS技研のファクトリーの一角を借りて行っている。2年後の1982年からは同じ中山サーキットでのTS110戦。ここからは、友人の転勤に伴い、クルマのメンテナンス場所をカーショップ・チェックに移しての参戦となる。そしてこの、チェックのファクトリーを間借りしてのレース活動こそが、レーシングカーを作りチューニングに没頭するようになったきっかけだ。場所や道具を自由に使うことが許され、しかも本格的なプロのワザやノウハウが目の前で展開されている。その時のことをオーナーは、
「本当に運に恵まれよった。OSさんの時もそうじゃったけど、チェックさんの力添えがなかったら、とてもレースは続けられよらんだし、知識や技術を身に付けることもおえんかった。そのことは絶対じゃ」と振り返る。

>>【画像44枚】フューエルインジェクション+スライドバルブ方式の吸気システム。燃料に圧力をかけて噴射するインジェクションは、負圧式のキャブと比べ、レスポンスが格段にアップ。スライドバルブは、バタフライ式よりも、流入抵抗が極めて少ないのが最大の利点

 その後、1985年からの2年間はジェミニによるワンメイクレースにチャレンジ。引き続き1987年からはAE86トレノでレースに参戦した。そして、1989年からが現在のB310サニーによるTSレースだ。3シーズンほど戦いならが仕上げたマシンは、その後アップデートした部分を除けば、今も当時の仕様のままだ。デビュー戦からちょうど10年。オーナーはレースを戦いながら身に付けた技術で、ほぼ現状のスペックのレーシングサニーを、プライベートで作り上げたことになる。一部のワークスマシンにしか与えられなかったハイポート仕様を再現したオリジナルのA14型改ヘッドに、クーゲルフィッシャーとスライドバルブで吸気するインテークユニットを、オーナーが今も師と仰ぐ「カーショップ・チェック」の小河原社長の協力を得て、独学で仕上げたのだ。プライベートでもワークスマシンの速さに絶対に負けたくないという一心で。




>> オーナーのサニーのチューニングテクニックは、レースの中で鍛えられた本物。友人と見よう見まねで作り上げたレースカー(B110サニー)で1998年にデビューして以来、TS110、ジェミニ、AE86トレノ、そして当時のレース活動の集大成となったB310サニーによるTSレースまで、約10年間にわたってさまざまなマシンでレースに参戦し、レーシング技術を養っている。B310サニーは手放すことができなかった愛機で、いつか再び復帰する日を夢見て所有し続けた。




日産 サニー クーペ(HB310)


SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:FRP製フロントスポイラー/バンパー/ボンネット/オーバーフェンダー/トランクリッド、アクリルウインドー(左右、リア)、ボディスポット増し
■エンジン:A12A型改ワークスヘッド仕様(ボアφ77mm×ストローク70mm、圧縮比12.6)、ワンオフチタン製バルブ(INφ41mm/EXφ33mm)、削り出しワンオフロッカータワー、オプションロッカーアーム、ロッカーシャフトタフトライド加工、オプションリフター、JE製ワンオフ鍛造ピストン、クロワー製H断面コンロッド、オプションクランク、TOMEI製80度カム(7.75mmリフト)、ベリリウム製バルブシート
■吸気系:クーゲルフィッシャー製機械式インジェクション、スライド式ストッロルバルブ
■排気系:ステンレス製ワンオフφ42.7mm等長タコ足、チタン製ワンオフφ60mmマフラー(サイド出し)
■点火系:永井電子機器製レース用CDI
■冷却系:ワンオフラジエーター、SA22C用オイルクーラー流用
■燃料系:ATL製30L燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ、ボッシュ製燃料ポンプ
■駆動系:オプションクラッチ、オプション56Aミッション、アルミ製ワンオフプロペラシャフト、H150デフ(ファイナル3.9〜4.625)、オプションLSD、フォーシング加工(オイル容量アップ&アルフィン装着)
■サスペンション:(F)オーリンズ製ワンオフ車高調、クスコ製ピロアッパーマウント、パイプAアーム/コントロールアーム、アイバッハ製スプリング(5.3kg/mm) (R)オーリンズ製ショック、アイバッハ製スプリング(4.3kg/mm)、中空スタビ
■ブレーキ:(F)ブレンボ製4ポットレーシングキャリパー(F3000用)/φ275mmローター (R)AE86用流用、S13シルビア用φ256mmローター
■インテリア:アバルト製ステアリング、ダッシュパネルワンオフ、スミス製機械式クロノメトリックタコメーター、大森メーター製φ60mmサブメーター(水温、油圧)、A/Fメーター、セーフティ21製6点式ロールケージ
■操舵系:S10シルビア用ステアリングギアボックス
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:レイズ ボルクレーシング メッシュ(F)13×8J -10 (R)13×9J -20

【3】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産 サニー クーペ(全6記事)


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【1】から続く

text : ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー) photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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