念願のワークスヘッドで高速域のピックアップが一段と鋭く!|日産 サニー クーペ【5】

わずか1.3LのNAエンジンながら、ダイナパックによる計測では、140psのパワーと14kg/mmのトルクを発生させるオーナーチューンのA12A型改1.3L。レブリミットは10000rpm

       
岡山県倉敷市で、当時はドライバーとしてレースに参戦し、現在もステアリングを握りながら、プライベートチューナーとしてA型エンジンのチューニングを行なっているオーナー。サニーユーザーの間では、かなり有名な存在だ。現在も、速くしたい一心でチューンナップを続けて進化するB310は、エンジンはもちろん、ボディからブレーキまで、そのスペックはとてもプライベーターが仕上げたものとは思えない。

【珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る 日産 サニー クーペ Vol.5】

【4】から続く


 このB310のエンジンヘッドは、A12型に適合するヘッドの中でも特に希少な通称「ワークスヘッド」だ。これは、ポート位置を高めに設計することで、吸気効率を高めたスペシャルなヘッド。このクルマが現役だった頃、一部のレーシングユーザーに供給されたことからそう呼ばれた。そして、レース専用となるこのヘッドの性能は、A型サニー乗りなら誰もが知るところで、レースの世界ではこのヘッドをまねてポートを加工する際、ハイポート化するチューナーが多かった。実は、オーナーのB310も、以前はハイポート加工したものを載せていた。そのため、本物のワークスヘッドとの出合いは思いもよらぬものだったらしく、ネットを介しての偶然の巡り合い。まさか手に入るとは思っていなかったという。

「A型好きなら誰もが欲しがるお宝ヘッド。念願だったので手元に届いた時はかなり興奮しましたよ(笑)。クーゲルフィッシャーにスライドバルブ、そして正真正銘のハイポートヘッド。吸入効率的には、A型全開でブチ回すには、最高の組み合わせです」

 腰下はタフなA12A型とオプションクランクという、これまた希少な組み合わせだ。ピストンはJE製のワンオフ、コンロッドはクロワー製のI断面、ロッカーアームはオプションで、タワーは削り出しのワンオフ、プッシュロッドも軽量なアルミ製ワンオフと、エンジンの内容はもう本物のワークスにも一歩も引けをとらない。わずか675kgのボディに正味140psのパワーと13kg‐mのトルク。

「ここまで速うなりよったら、もう運転の方は誰かに任せたほうがええかもしれんのう(笑)」

>>【画像16枚】140psのパワーと14kg/mmのトルクを発生させる1.3LのNAエンジンなど。各気筒に燃料を噴射するシステムで、噴射ノズルはインマニではなく、スロットルの手間に設置する方式をとる



>> フューエルインジェクション+スライドバルブ方式の吸気システム。燃料に圧力をかけて噴射するインジェクションは、負圧式のキャブと比べ、レスポンスが格段にアップ。スライドバルブは、バタフライ式よりも、流入抵抗が極めて少ないのが最大の利点だ。





>> スライドバルブはインポートが真円形の梅田チューニング製で、ワークスヘッドのポートもそれに合わせて真円加工している。





>> 各気筒に燃料を噴射するシステムで、噴射ノズルはインマニではなく、スロットルの手間に設置する方式。


日産 サニー クーペ(HB310)


SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:FRP製フロントスポイラー/バンパー/ボンネット/オーバーフェンダー/トランクリッド、アクリルウインドー(左右、リア)、ボディスポット増し
■エンジン:A12A型改ワークスヘッド仕様(ボアφ77mm×ストローク70mm、圧縮比12.6)、ワンオフチタン製バルブ(INφ41mm/EXφ33mm)、削り出しワンオフロッカータワー、オプションロッカーアーム、ロッカーシャフトタフトライド加工、オプションリフター、JE製ワンオフ鍛造ピストン、クロワー製H断面コンロッド、オプションクランク、TOMEI製80度カム(7.75mmリフト)、ベリリウム製バルブシート
■吸気系:クーゲルフィッシャー製機械式インジェクション、スライド式ストッロルバルブ
■排気系:ステンレス製ワンオフφ42.7mm等長タコ足、チタン製ワンオフφ60mmマフラー(サイド出し)
■点火系:永井電子機器製レース用CDI
■冷却系:ワンオフラジエーター、SA22C用オイルクーラー流用
■燃料系:ATL製30L燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ、ボッシュ製燃料ポンプ
■駆動系:オプションクラッチ、オプション56Aミッション、アルミ製ワンオフプロペラシャフト、H150デフ(ファイナル3.9〜4.625)、オプションLSD、フォーシング加工(オイル容量アップ&アルフィン装着)
■サスペンション:(F)オーリンズ製ワンオフ車高調、クスコ製ピロアッパーマウント、パイプAアーム/コントロールアーム、アイバッハ製スプリング(5.3kg/mm) (R)オーリンズ製ショック、アイバッハ製スプリング(4.3kg/mm)、中空スタビ
■ブレーキ:(F)ブレンボ製4ポットレーシングキャリパー(F3000用)/φ275mmローター (R)AE86用流用、S13シルビア用φ256mmローター
■インテリア:アバルト製ステアリング、ダッシュパネルワンオフ、スミス製機械式クロノメトリックタコメーター、大森メーター製φ60mmサブメーター(水温、油圧)、A/Fメーター、セーフティ21製6点式ロールケージ
■操舵系:S10シルビア用ステアリングギアボックス
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:レイズ ボルクレーシング メッシュ(F)13×8J -10 (R)13×9J -20


【6】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産 サニー クーペ(全6記事)


関連記事:珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る

関連記事:サニー



【1】【2】【3】【4】から続く

text : ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー) photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

RECOMMENDED

RELATED

RANKING