ワークスヘッドにスライドバルブ!?  マニア垂ぜんのA12型を搭載したレーシング仕様|日産 サニー クーペ【1】

フロントスポイラーは、アンカーフックに吊り下げるように取り付ける、今風な脱着システムとなっているフロント

       
岡山県倉敷市で、当時はドライバーとしてレースに参戦し、現在もステアリングを握りながら、プライベートチューナーとしてA型エンジンのチューニングを行なっているオーナー。サニーユーザーの間では、かなり有名な存在だ。現在も、速くしたい一心でチューンナップを続けて進化するB310は、エンジンはもちろん、ボディからブレーキまで、そのスペックはとてもプライベーターが仕上げたものとは思えない。

【珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る 日産 サニー クーペ Vol.1】

 6年ほど前に、自身が経営する空調設備工事事務所の一角をマイファクトリーにしたオーナー。サラリーマンなら定年となる年齢に近づいたことを機に、本業のほうは徐々に規模を縮小し、最近では趣味のレーシングサニーのために費やす時間のほうが、本業よりもずっと長くなったそう。

免許を取ってすぐにレースに没頭するようになり、それから30年近くもの間、馴染みのショップに通いつめて、サニーのチューニングノウハウや技術を学んだ。プライベーターというスタンスながら、腕は立派に本格チューナーの域にある。特にヘッドチューンの力量はサニー乗りの間で評判で、最近は、依頼があれば他人のためにも腕を振るうようになった。しかし、それでも「商売にするつもりはねぇですよ。欲しいという方に譲ったり、知り合いに頼まれてやる程度」と、オーナーはプライベーターという立ち位置を変えようとはしない。あくまでも自分は素人であり、そのほうがレースもチューニングも面白いという考え方だ。

そんなオーナーの気質は、往年のレーシング活動の中で育まれたもの。何の知識もなく、軍資金もほとんどない中で、安いベース車両(B110サニー)を買って仲間と始めたレース。クルマを作るだけでも、丸2年がかり。そして、デビューしてからもパーツにお金がかけられない分、チューニングやセッティングに工夫を凝らし、有力チームに食らいついていった戦いの中で鍛えられたのだ。

>>【画像44枚】軽量なFRP製に交換されているボンネットとハッチバック、それにリアバンパーなど。窓は、側面とリアガラスを軽量なアクリル製に交換してウエイトダウン




>> 外装はカラーリングを含め、ほとんどが現役のころのままのままだ。ゼッケンも当時と同じ32番。オーナーが最も好きな番号。


日産 サニー クーペ(HB310)

SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:FRP製フロントスポイラー/バンパー/ボンネット/オーバーフェンダー/トランクリッド、アクリルウインドー(左右、リア)、ボディスポット増し
■エンジン:A12A型改ワークスヘッド仕様(ボアφ77mm×ストローク70mm、圧縮比12.6)、ワンオフチタン製バルブ(INφ41mm/EXφ33mm)、削り出しワンオフロッカータワー、オプションロッカーアーム、ロッカーシャフトタフトライド加工、オプションリフター、JE製ワンオフ鍛造ピストン、クロワー製H断面コンロッド、オプションクランク、TOMEI製80度カム(7.75mmリフト)、ベリリウム製バルブシート
■吸気系:クーゲルフィッシャー製機械式インジェクション、スライド式ストッロルバルブ
■排気系:ステンレス製ワンオフφ42.7mm等長タコ足、チタン製ワンオフφ60mmマフラー(サイド出し)
■点火系:永井電子機器製レース用CDI
■冷却系:ワンオフラジエーター、SA22C用オイルクーラー流用
■燃料系:ATL製30L燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ、ボッシュ製燃料ポンプ
■駆動系:オプションクラッチ、オプション56Aミッション、アルミ製ワンオフプロペラシャフト、H150デフ(ファイナル3.9〜4.625)、オプションLSD、フォーシング加工(オイル容量アップ&アルフィン装着)
■サスペンション:(F)オーリンズ製ワンオフ車高調、クスコ製ピロアッパーマウント、パイプAアーム/コントロールアーム、アイバッハ製スプリング(5.3kg/mm) (R)オーリンズ製ショック、アイバッハ製スプリング(4.3kg/mm)、中空スタビ
■ブレーキ:(F)ブレンボ製4ポットレーシングキャリパー(F3000用)/φ275mmローター (R)AE86用流用、S13シルビア用φ256mmローター
■インテリア:アバルト製ステアリング、ダッシュパネルワンオフ、スミス製機械式クロノメトリックタコメーター、大森メーター製φ60mmサブメーター(水温、油圧)、A/Fメーター、セーフティ21製6点式ロールケージ
■操舵系:S10シルビア用ステアリングギアボックス
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:レイズ ボルクレーシング メッシュ(F)13×8J -10 (R)13×9J -20


【2】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産 サニー クーペ(全6記事)


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text : ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー) photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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