幻の4気筒DOHCユニット動態保存計画【1-1】倉庫から発見された「TC16-MA2」を再生する!|トミタクガレージ再生プロジェクト#01

幻の4気筒DOHCユニットTC16-MA2

       
2019年春、OS技研の倉庫から「TC16-MA2」のものと思われるヘッドなどのパーツが運び出された。現行のTC16-C1の元祖モデルで、伝説の6気筒DOHC「TC24-B1」の原型とされる貴重なエンジンの部品だ。「ヘッドと一緒に展示品にでもしょーるか?」という上層部に対し、「エンジンは動いてなんぼじゃ思いますけど……」と技術陣。この話を聞きつけ、「愛車への搭載希望」と名乗り出た熱狂的なTC16フリークと共に、幻の4気筒DOHCユニットの動態保存計画がスタートした!

【トミタクガレージ再生プロジェクト#01 Vol.1】

【画像19枚】TC16‐MAの各部パーツ。現行モデル同様、鋳造にて成型されたTC16-MA2のヘッドカバーなど

現行の4気筒モデルTC16‐C1の元祖であり、6気筒モデルTC24‐B1の原型ともなるTC16‐MAには2つのモデルが存在した。ひとつは1972年にデビューした初代のTC16‐MA1。
そしてもうひとつが、その改良型となるTC16‐MA2だ。2つの相違点はカムの駆動方式。
MA1がギア駆動だったのに対して、MA2では「静粛性」という観点からチェーン駆動に変更された。
後に登場した元祖TC24‐B1のカムの駆動方式は、MA2のシステムと同じチェーン駆動が採用されている。
また、バルブ挟み角は20度が採用されており、浅いペントルーフ形燃焼室と同様、現在のTC24‐B1Zにも踏襲されている。

ちなみにTC16‐MAのMAは、このエンジンを開発したOS技研の先代社長、岡崎正治さんの「まさはる」に由来。
岡崎さんにとっても、OS技研のエンジニアたち、このエンジンがデビューした当時を知る往年のファンにとっても、忘れることのできない思い出深いDOHC16バルブユニットだ。
【2】へ続く


>>新旧TC16のヘッドカバーの大きさを比較。奥行きが同じ490mmなのに対して、幅は現行のC1が240mm、MA2は285mmと45mmも幅広だ。ボルトのピッチは新旧ピタリと一致する。


>>取り外されたカムホルダーは欠品。C1用のホルダーは合わないのでワンオフする。オリジナル仕様にこだわり、型を作り鋳造される。



>>燃焼室&ポートプラグの位置がセンターにある理想的な燃焼室。形状は薄いペントルーフで、カム室側の仕様は変わっても燃焼室の形状、バルブ挟み角は20度で、現行のTC24も同じ。バルブ径はIN/φ34.5mm、EX/φ30.5mmでC1と同サイズ。なお、TC16-C1とMA2は吸排気のレイアウトが反転する。その理由は、当時はL型と逆傾斜にする場合、組み合わせられるベルハウジングがLY型用しかなく、高価で買えなかったそうだ。

【2】へ続く

初出:ノスタルジックスピード vol.023 2020年1月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

トミタクガレージ再生プロジェクト#01(全3記事)

TEXT:HIDEO KOBAYASHI/小林秀雄 PHOTO:MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ) COOPERATION : MIZUKAMI AUTO/水上自動車工業

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