「ぜひ私に4気筒のTC16を売ってください」「首を縦に振ってもらうまでは帰らない。」|1969年式 ダットサン ブルーバード SSS Vol.3

左が今のTC16-C1で、右がOS技研の倉庫に眠っていた元祖TC16-MA1/2のヘッド。C1とMA1/2では、点火順序が異なる。MA1/2は1→2→4→3なのに対し、C1は1→3→4→2を採用。

       
あこがれのエンジンを楽しむために旧車乗りになった。そんな一風変わった510ブルーバードのオーナーが九州にいる。彼をとりこにしたエンジンはL型4気筒ベースとなるOS技研のTC16-C1。兄貴分の6気筒TC24-B1の後発でリバイバルが望まれるも、いまだ正式な発表のない幻のハイレブパワーユニット。現在、世界に1基だけの究極のL型4気筒を、彼はいかにして手に入れ、どう味わうのか。せん望のTC16-C1ライフを紹介する。

【1969年式 ダットサン ブルーバード SSS Vol.3】

【3】から続く

 しかも、TC16の存在を知り、4気筒のTC16へターゲットを修正する。ハコスカやS30Zの購入は難色を示した奥さんも、510ブルーバードのデザインならいいとの意向だ。エンジンと、手が届きそうな車両のサイズ感がマッチした。そして、ちょうどその頃、OS技研ではワークスのレーシングカーに搭載すべく開発を進めてきたTC16が仕様変更となり、組み上がったTC16が一基、行き先がなくなり宙に浮いた格好となっていた。まさに、願ったり、叶ったりの絶好のタイミング。

「ぜひ私に4気筒のTC16を売ってください」。オーナーはOS技研の岡崎正治社長への直談判を断行する。
「富松さんの紹介でしたが、岡崎社長とは初対面です。今思えば、大胆不敵もはなはだしい。でも、あの時は真剣でした。首を縦に振ってもらうまでは帰らない。それぐらい強い覚悟を持ってお会いしに行っています」。


>>【画像19枚】当時モノにこだわった起用となる2連装のウエーバー48DCOEキャブレターなど。より大口径な50DCOEへの換装がオーナーの将来の夢

なんと、取材前日にFRPボンネットを装着!  


レーシングなTC16に重いボディは似合わない。というわけで、ボンネットの FRP化を決行。力を貸してくれたのは、ともにTCエンジンを愛する「TCファンクラブ」の面々。さらに、トランク、フロントフェンダーもFRPに変更する予定だ。





微妙に狂いのあるカウルトップカバーのチリを、グラインダーで削って調整する。プロ真っ青の緻密な作業。





グラインダーで削って調整したカウルトップカバーを装着。ネジ穴にズレが微妙にあって、ビスがなかなかキレイに収まらない。息を止めながらのデリケートな作業だ。





ドリルによる穴あけを匠の技で行う。





ボンピンを通す穴をボンネットに開ける。後戻りできない作業。



1969年式 ダットサン ブルーバード SSS(P510)
SPECIFICATIONS 諸元
■ エクステリア:リスタード製FRPボンネット/カウルトップ/フロントフェンダー/トランク
■ エンジン:OS技研TC16-C1、ボアφ89mm×ストローク78mm(1940cc)、圧縮比13.5:1、OS技研鍛造ピストン、L14型用コンロッド(フルフロー加工、SQ処理)、L18型用フルカウンタークランク(オイル穴加工、ラッピング、AQ処理)カム320度(11.5mmリフト)、バルブスプリングセット荷重23kg(フルリフト荷重52kg)
■ 点火系:MSD、OS技研製デスビ(プロトタイプ)
■ 吸気系:ウエーバー48DCO S/P(アウターベンチュリーφ42mm、ニードル250、エアジェット220、メインジェット185、エマルジョンF4、ポンプジェット50)
■ 排気系:OS技研製φ48mmタコ足、長瀬発動機製φ60mmワンオフマフラー
■ 冷却系:リフレッシュ60製大容量ラジエーター(電動ファン)、亀有製16段オイルクーラー
■ 燃料系:燃料ライン引き直し(φ10mm)
■ 駆動系:OS技研Aタイプツインプレートクラッチ(フライホイール軽量加工)、直結5速クロス、インプレッサ用R180デフケース(ファイナル4.444)、OS技研スーパーロックLSD、亀有強化フランジ
■ 足回り:(F)全長調整式車高調(バネレート10kg/mm) (R)TRDショックアブソーバー(ショート)、強化スプリング(16kg/mm)
■ ブレーキ:(F)エンドレス製パッド (R)S30Z用アルフィンドラム(加工)
■ タイヤ:ポテンザRE71R 165/55R14
■ ホイール:ボルクレーシングTE37 14×7J ±0
■ 内装:Defi NSタコメーター/NS追加メーター(油圧、油温、水温)

【4】に続く


初出:ノスタルジックスピード 2018年2月号 vol.015(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 ダットサン ブルーバード SSS(全6記事)

関連記事: 熱狂のL型チューンド!!

関連記事: ブルーバード


【1】【2】から続く

text : ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー)photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

RECOMMENDED

RELATED

RANKING