それ、一体どんなルートで探してきたの? 実物の捜索は困難を極めた86レビンのパーツ探し|進化する「頭文字D」レプリカ vol.7【2】

斜行タイプのロールバーは90年代の走り屋仕様全盛期にはよく見られたアイテムだが、このように縦に2本が並行するタイプは超レア

【1】から続く

『頭文字D』の主人公・藤原拓海にとってかけがえのない存在であるキャラクター・秋山渉。彼が乗っているマシン・AE86レビンのエンジンは、現在では探すことすら難しいと言われているほど希少である4A-GZE型だ。AE86レビンを実車として復元するプロジェクト!

【進化する「頭文字D」レプリカ vol.7 秋山の心臓 vol.2】

 AE86トレノ3ドアに藤原とうふ店のデカールを貼り、ワタナベホイールを履いただけの「なりきり」拓海仕様が跋扈していた時代に、原作に忠実に車両をメイクするという斬新な提案を行ったカーランド。そのこだわりは瞬く間に浸透し、いまでは「秋名仕様」「プロジェクトD仕様」「劇場版仕様」など、どの世代をお手本として仕上げていくかが、頭文字Dファンにとっての共通言語にもなっている。

 ただし、「199X年」とされる劇中の時代設定は連載開始の95年を想定しているのだろう。当時としてはメジャーだったパーツも流行り廃りを経た現在では、簡単に手に入るものはほぼ皆無といっていい。それでもカーランド得知雅人代表の執拗な探索作業により秋山仕様を再現するのに必要なパーツは、着々と揃いつつある。ひとつひとつのパーツに「それ、一体どんなルートで探してきたの?」と叫びたくなるほどのレアなパーツが発掘されている。

 その最たるものはエンジンだ。前回の記事(vol.1)のとおり、MR2(AW11)、レビン/トレノ(AE92、AE101)にしか搭載されなかった4A‐GZE型。現実に販売された台数が少ないうえに、手荒く扱われた個体が多い=スクラップされる率がそもそも高く、さらに部品取りの役目を終えて廃車される個体の増加、と二重苦・三重苦の現状だ。

 とくに程度を重視する得知代表は、完動品を前提としているため車両に搭載された状態でしか仕入れない。エンジン単体では走行距離やコンディションの把握が難しいからだ。ハーネスを引き直すためにも、純正品が完備されている状態が好ましい。

 そうした努力を経て入手した4A‐GZE型は、シリーズ最強版である、AE101搭載の17ps仕様。ただしAE86に載せるにあたっては、AE92用のハーネス&ECU、同時点火ユニットが適しているため、もう1基AE92用4A‐GZEを手配するという念の入れようだ。

「運よくエンジンが見つかったとしても、9割以上の確率でS/C本体が壊れています。オーバーホールもできないので、ASSYで交換することになります」(得知代表)。

 搭載にあたっても、型式こそ同じ「4A‐G型」ではあるが、横置きを縦置きにコンバートするための重作業が必要になる。

 そして秋山仕様オリジナルポイントの再現。ノーマル4A‐GZE型との大きな違いはインタークーラーレスという点。ノーマルではヘッドカバー上に位置するインタークーラーが原作では描かれておらず、といって、前置きのための配管もまた描かれていない。

【画像15枚】参考にしている原作を研究しても、そもそも年代が経過しているため実物の捜索は困難を極めた。それをカーランド代表のチョイスにより原作に近づいたスペックになった。ウイング一体型のリアゲートは、原作に忠実に鍵穴もスムージングした。BLITZブースト計やドアミラーなど。完備品にこだわる得知代表は時間はかかったがさまざまなパーツを状態よく入手することができた



>>拓海と同じく、後期はカーボンボンネットになる秋山号。イベント時などは原作と同様にグリルレスとするが、ラジエーターコアなどを守るため普段乗りの際はグリルを装着する予定だ。



>>ウイング一体型のリアゲートは、原作に忠実に鍵穴もスムージングした。車高調はカーランドオリジナルを仮付けした状態。実際はこれよりも低い車高になる。



>>いまやカーランドの来客はワールドワイド。世界のファンと交流するカーランドAE86マイスター得知雅人代表。シンガポール、香港などアジア圏、アメリカやオーストラリアなどの英語圏に加え、フランスのファンも訪れる。秋山号についても知っている(このシリーズを読んでいる?)ようで興味津々らしい。


【3】へ続く

初出:ハチマルヒーロー 2017年3月号 Vol.40
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

進化する「頭文字D」レプリカ vol.7(全3記事)

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TEXT:KIYOSHI HATAZAWA/畑澤清志 PHOTO:MINAI HIROTAKA/南井浩孝

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