ブロッコリーからのオファーは「ジェームス・ボンドの顔がよく見えるように」|オープン仕様で急造されたボンドカー【2】 1966年式 トヨタ 2000 GT ボンドカー

映画仕様トヨタ2000GTは、ヤマハのピアノ作りの技術を生かした高級なローズウッドの仕上がりだ。

【1】から続く

トヨタとヤマハ発動機が共同開発した屈指のスポーツカー「トヨタ2000GT」が日本グランプリに向けてマシン制作に取りかかっていた最中、アメリカのアクション映画『007』シリーズの映画出演オファーが舞い込んだ。

【オープン仕様で急造されたボンドカー 1966年式 トヨタ 2000GT vol.2】 

 日本グランプリを前に契約を結んだが、撮影までに解決しなければならない難問が山積している。トヨタ2000GTは発売前のプロトタイプだったので、提供できるクルマがなかった。また、ブロッコリーから、「ジェームス・ボンドの顔がよく見えるように、フルオープンに改造してほしい」との要望が出された。剛性不足が心配だったため、トヨタ側はルーフ部分だけを外せるタルガルーフを提案したが、ブロッコリーは納得しなかったため、最終的にフルオープンの案を飲んでいる。

 オープン化への改造を手がけたのは、レース車両や特殊車両を造り慣れているトヨペット・サービスセンターの綱島工場だ。量産モデルに限りなく近い1台の試作車が提供され、1台は日本での撮影用にオープンに改造。もう1台は、海外でのロケやショーへの出品用に同様の改造を施している。時間がないため、精密な図面をあきらめ、ほとんど現物合わせで製作された。

【画像14枚】無理難題の要求に応えてついに完成させたボンドカー。日本楽器(ヤマハ)のピアノ作りに技術を生かした高級なローズウッドのインパネが見事。ステアリングもウッドリムだ。撮影車にはソニー産の通信機器を装備



>>メーターパネルには、左に9000rpmのタコメーター、右に250km/hのスピードメーターをそなえる。


>>中央には5個の丸形補助メーターをドライバーに向けて配置。左から、燃料、油圧、油温、水温、電流計で、メーターは照度調節式だ。トランスミッションはフルシンクロの5速MT、パーキングブレーキはステッキ式。


>>各種メーターの下にはオーディオがセットされ、その下にはストップウォッチと時計が収まる。



1966年式 トヨタ 2000GT(MF10)


全長×全幅×全高 4175×1600×1160mm(1140mm)
ホイールベース 2330mm
トレッド前後とも 1300mm
最低地上高 155mm
室内長 720mm
室内幅 1430mm
室内高 950mm
車両重量 1120kg
乗車定員 2名
最高速度 225km/h
登坂能力 sinθ0.567
最小回転半径 5.0m
エンジン型式 3M型
エンジン種類 水冷直列6気筒DOHC
総排気量 1988cc
ボア×ストローク 75.0×75.0mm
圧縮比 8.4:1
最高出力 150ps/6600rpm
最大トルク 18.0kg-m/5000rpm
燃料供給装置 ソレックスキャブレター40PHH(ウエーバー45DEOC9)×3基
トランスミッション形式 前進5段後退1段、オールシンクロ
変速比 1速3.143/2速1.636/3速1.179/4速1.000/5速0.844/後退3.238
最終減速比 4.375
燃料タンク容量 60L
ステアリング形式 ラックアンドピニオン
サスペンション 前後ともダブルウィッシュボーン・コイル独立懸架
ブレーキ 前後ともディスク
ホイール 前後ともマグネシウム(ワイヤーホイール)
タイヤ 前後とも165HR-15
発売当時価格 238万円
()内はボンドカーの仕様



【3】へ続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年10月号 Vol.195

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1966年式 トヨタ 2000 GT(ボンドカー)(全3記事)



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