完璧な「秋山仕様」を目指す。ボディーカラーもできるだけ純正色に近づける|進化する「頭文字D」レプリカ vol.5【3】

ここにおさまる予定の4A-GZE型エンジンは、AE92用とAE101用の2基準備されている。お互いのいいところをミックスして組まれる予定だ

       
トレノとレビンの違いはあれど、主人公・藤原拓海と同じAE86乗りとして時として対峙し、時として拓海へ走り屋としての道を教える秋山渉。深みのある描かれ方は、とても不思議な関係に映る。その秋山が駆るマシンのレプリカ製作が、いよいよ佳境に突入した。

【進化する「頭文字Dレプリカ」 vol.5[3]】

 当時はトヨタ自動車本社工場と関東自動車工業(現・トヨタ自動車東日本)のふたつの工場で生産されていたAE86。生産工場によっても塗装の仕上がりが微妙に異なるという。得知代表の慧眼はその違いをたやすく見抜くことができる。

 秋山仕様においてもできるだけ当時の純正色を再現することが理想だが、塗料を希釈するための溶剤が現在では環境にやさしいタイプへと変わっており100%当時のままの色調再現は難しい状況ではある。が、完璧を目指す姿勢に変わりはない。

 塗装業者の腕の良しあしが歴然とわかるのは、2トーンの塗り分け部分。フェンダーアーチの円周、フューエルリッドのエッジの部分など、細部のマスキングに手を抜くことなく仕上げることが、全体のディテールアップに大きく影響する。

 サイドモールやバンパーモールなど樹脂部品との色合わせも、塗料の調合を微妙に変える秘伝のレシピで、まったく違和感がない自然な仕上がりとなっている。

「ムダな溶接個所を増やさず、できるだけ熱を入れないことで、長寿命の骨格にする」というこだわりは前回の項にてお伝えしたが、ボディパネルについても「余計なものは足さない」というカーランドのポリシーが貫かれる。平滑な下地作りはもちろんだが、できるだけ板金作業による成形を行い、余計なパテを極力使わない方向で仕上げている。キズ、サビ、クサリ、凹みは、幾重ものチェックを経て解消される。

 今後はS/C仕様の4A‐ZGE型エンジンを載せていくことになるが、いつか小さくはないハードルも待ち構えている。まずは冷却系の問題。劇中に描かれるカットを考察すると、ヘッド上にはインタークーラー(以下
I/C)の姿はない。では前置きの可能性はどうかと分析を進めるのだが、前へと伸びるパイプの姿がないことから、AE86の構造上、十分な容量の前置きI/Cは設置できないであろう、との結論に達した。

 仮に前置きにできたとしてもパイプを長くせざるを得ず、圧損によるパワーロスを招く。さらにはエアコン&パワステとの同居が不可となるため、デイリーユースの難易度は増してしまう。以上のことから、インタークーラーレスにすることが決定した。

「カーランドとしても、この作業は未知の領域」と語る得知代表。だが、この秋山仕様を忠実に作り上げる技術的チャレンジで、新たなる知見を獲得できることは間違いない。幅広いニーズに応えるべく、挑戦の道は続く。

【画像16枚】東京から京都へ。製作も大詰めへ向かう秋山仕様にひさしぶりに再会した鶴岡聡さんとカーランド得知代表




>>職人による鉄板を叩く作業を多用しながら面を平滑に近づけていく。ムダなパテを使わないことがボディを長持ちさせることにつながる。



朗報! 純正パーツ供給問題が解消へ

純正パーツ欠品に悩むAE86オーナーのために、得知代表が立ち上がった。程度の良い中古すら入手が難しくなったパーツを中心に、オリジナルで型を起こし補修部品としてリリースするべく試作を重ねている。現在のところ、前期トレノ用ラジエーターグリル/サイドマーカー/フロントバンパー、3ドア用クオータートリムジャッキカバー/パッケージトレイブラケット、さらにダッシュボードなどを試作中。ABS樹脂のパーツをFRPで再現するその品質はカーランドクオリティ。表面のシボなど完璧に再現している。灼熱の車内でも劣化しないよう耐熱テストも完了、製品版リリースへ向け進んでいる。「こんなパーツを作ってほしい」というリクエストも受付中だ。





【1】【2】から続く


初出:ハチマルヒーロー 2016年11月号 Vol.38
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

進化する「頭文字Dレプリカ」 vol.5 (全3記事)

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text:Kiyoshi Hatazawa/畑澤清志 photo:Minai Hirotaka/南井浩孝 Cooperation : カーランド

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