初のDOHC! ヒルクライムマシンとしてデビューした完全新規設計のポルシェ910|日産R381vsカレラ10(910)【3】

2Lプロトとして当時世界最強と目されたポルシェ910。906開発時にあった制約も解け、機械的には自由な設計が可能となった。風洞は使用していないが空力面の向上も果たした

       
【特集:日産vsポルシェ 日産R381vsカレラ10(910)vol.2】

 かたやポルシェのレーシングプロジェクトは、906を発表して以降、急テンポで展開した。66年後半には906の発展型となる910を開発。67年からの主戦力として企画されていた。

 日本では、サーキットレースのみで知られる904、906、910だが、ヨーロッパではもうひとつ、ヒルクライムでの用途があった。もともとはオリジナルボディで参戦していたが、ヒルクライム専用のスパイダーボディに変えられ、軽量化と高出力化が実施されるようになっていた。910の場合もグループ6プロトとしてより、ヒルクライムマシン「910ベルク」としてのデビューが早く、906の発展型として継続的な開発が行われていた。

 基本的には、906と同じ鋼管スペースフレームと水平対向6気筒の組み合わせだが、エンジンはDOHCの901/21型に変わり、フューエルインジェクションを装備して220psにパワーアップ。

 サスペンションは新規設計となりホイールも軽量な13インチ、サービス性に優れたセンターロック式に変えられた。906がまだ904を引きずっていたことに対し、910は完全に新規設計の車両ということができた。

 ただ、ヒルクライム車が発端ということで、風洞実験を行わずにデザインを決めたモデルでもあった。空気抵抗値自体はそれほど低ドラッグというわけでもなかったが、ノーズリフトもなく空力バランスには優れていた。

 なお、910自体は67年前期のモデルとなり、68年5月時点での最新版ポルシェは3Lプロトの908となる。仮に908が走っていれば、R381の優勝はなかったかもしれない。

【画像8枚】ポルシェ910の発端はヒルクライムマシンであり、風洞実験を行わずにデザインを決めたモデルであった


>>ワイドトレッド化によって906よりシャシー性能を上げた910。タイヤの違いもあるが、富士のラップで3秒程度の向上が見られた。R380の性能指標とされたモデルでもある。


>>非常に機能的な仕上がりを見せる910のコックピット。市販商品として販売されたため、エンジンキーもついている。


>>エンジンは901系で初のDOHCが採用され、最高出力は906の10psアップとなった。ワイドトルク性、燃費性能の向上が著しかったという。


【1】【2】から続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

日産R381vsカレラ10(910)(全3記事)

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tete&photo:Akihiko Ouchi/大内明彦

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