「何か1つでいいから世界一のものを」【3】1979年式 童夢 P-2

シザーズドアは、零に比べると少し外側に向かって開くようになっている

       
【 1979年式 童夢 P-2 Vol.3】

【2】から続く

 「何かひとつでいいから世界一のものを」という希望は全高で表現。980mmという高さは市販スポーツカーとして規格外で、当時全高が低いクルマの代名詞であったポルシェ906やフォードGT40よりもはるかに低かった。それを実現するため、このようなデザインになったといっても過言ではない。

 ジュネーブ・ショーにおける童夢零の評判は想像する以上のものだった。日本はスーパーカーブームのど真ん中だったこともあり、子供たちを中心に人気が出たことはもちろんだが、当時の資料をみても海外記者の評判が高かったことが明らか。デザインのすべてに近未来的な仕掛けがある童夢は、カウンタックや512BBといった当時のスーパーカーを凌駕するインパクトを持っていたのだ。その反響は別のカタチですぐに表れた。日本国内の模型、玩具、文具メーカーがこぞって意匠権の契約を申し込んできたのである。実際に作られていないクルマにもかかわらず巷には童夢零の絵が入った筆箱や消しゴムなど数多くの童夢零グッズがあふれていた。それはすべて童夢に還元され、億単位の金銭が転がり込んできており、実車を作ることなく童夢は莫大な資金を得ていたのである。


>> 【画像26枚】リアをバッサリ切っているデザインのため楔のような印象の 童夢 P-2のサイドビューなど。これによって世界でもっとも低い全高を実現




>> オリジナルステアリングも人気が高く、零とP-2それぞれのデザインに近いものが販売された。台形のメータークラスターの中はすべてデジタル。






>> ATセレクトバーに見えるが、MTのシフトレバー。このP-2はサーキットなどで実走行している車両であり、このシフトレバーもダミーではない。手前にあるのは小物入れではなく、サイドブレーキ。





>> ほとんど寝たような状態でシートに収まっているため、遠く感じるフットペダルも踏めないことはない。ただし、狭すぎて、慣れるまでに時間がかかる。




>> オーディオとエアコンのスイッチだけが唯一1970年代を感じさせる。





【4】に続く


1979年式 童夢 P-2


Specification 諸元
全長:4235mm
全幅:1775mm
全高:990mm
ホイールベース:2450mm
トレッド前後:1445/1505mm
最低地上高:130mm
車両重量:950kg
シャーシー:スチール・チューブ・フレーム
ボディ:FRPセミモノコック
エンジン種類:水冷直列6気筒SOHC
エンジン形式:L28型
総排気量:2753cc
最高出力:145ps
サスペンション:前後ともダブル・ウイッシュボーン・コイル
ミッション:ZF-5DS-25/2
ステアリング形式:ラック&ピニオン
ブレーキ前後:ベンチレーテッド・ディスク/ソリッド・ディスク
タイヤ:前185/60HR13 後225/60HR14



初出:ノスタルジックヒーロー 2018年6月号 vol.187
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1979年式 童夢 P-2(全3記事)

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【1】【2】から続く

text:NOSTALGIC HERO/編集部、AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo:ISAO YATSUI/谷井 功

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