「レースカーはリスクが高いからロードカーを作った」が・・・【2】1979年式 童夢 P-2

リアをバッサリ切っているデザインのため楔のような印象。これによって世界でもっとも低い全高を実現

       
【 1979年式 童夢 P-2 Vol.2】

【1】から続く

 ちなみになぜレーシングカーにしか興味がなかった林みのるさんがロードカーを作ろうとしたのだろうか。実際に取材した本誌ライター大内明彦さんがその件を尋ねた際「レースカーはリスクが高いからロードカーを作った」とのこと。その言葉のすぐあとに「でもロードカーの方がレースカーより何倍もリスクが高いことに、実際に作ってから分かった」と答えている。ただ、林みのるさんは決して無計画な人ではない。その証拠に童夢零立ち上げ時には誰もが納得する企画書、デザイン書を用意。もちろん一人の力ではなく、多くの協力者を集めていたのだ。

 林みのるさんは1969年に三村信昭さんが設立したレーシングコンストラクター「EVAカーズ」に参加。そこにいたメンバーを中心に声をかけ、仲間としていた。そのメンバーが凄い。由良拓也さん(のちにムークラフトを設立。ネスカフェのテレビCMに出演した違いが分かる男)、三村信昭さんの弟の三村建治さん(1973年にマキF1を組織)、小野昌朗さん(のちに東京R&Dを設立し、ヴィーマックを作った)。

 童夢零プロジェクトに課せられたゴールは1978年のサロン・アンテルナショナル・ド・ロト(ジュネーブ・ショー)への出品。1975年にスタートしたプロジェクトだったが、実作業に入ったのは1977年初頭。そこから地獄のような作業をこなし、童夢初、そしてメンバーそれぞれとしても初めてとなるロードスポーツカーを作り上げた。


>> 【画像26枚】オーディオとエアコンのスイッチだけが唯一1970年代を感じさせるセンターコンソールなど、童夢 P-2のディテールの数々




>> ホイールは零と共通。同じものではないが、このデザインのホイールが販売されていた。タイヤのサイズはフロントが185/60VR13、リアが255/55VR14。車高の低さからかなり大きく見える。





>> スーパーカーの代名詞であったシザーズドア(一般的にはガルウイングと呼ばれている跳ね上げ式)





>> エンジン冷却用のインテーク。



【3】に続く


1979年式 童夢 P-2


Specification 諸元
全長:4235mm
全幅:1775mm
全高:990mm
ホイールベース:2450mm
トレッド前後:1445/1505mm
最低地上高:130mm
車両重量:950kg
シャーシー:スチール・チューブ・フレーム
ボディ:FRPセミモノコック
エンジン種類:水冷直列6気筒SOHC
エンジン形式:L28型
総排気量:2753cc
最高出力:145ps
サスペンション:前後ともダブル・ウイッシュボーン・コイル
ミッション:ZF-5DS-25/2
ステアリング形式:ラック&ピニオン
ブレーキ前後:ベンチレーテッド・ディスク/ソリッド・ディスク
タイヤ:前185/60HR13 後225/60HR14



初出:ノスタルジックヒーロー 2018年6月号 vol.187
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1979年式 童夢 P-2(全3記事)

関連記事:童夢 P-2

関連記事:童夢



【1】から続く

text:NOSTALGIC HERO/編集部、AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo:ISAO YATSUI/谷井 功

RECOMMENDED

RELATED

RANKING