環境を考え採用された当時まだ珍しかったドライアイスブラスター【1-3】KP47DOHCスターレット復元作業 byトムス

サビ落としに使用されたドライアイスブラスター。これがドライアイスの粒。円柱形で大きさは米粒と同じぐらいだろうか。溶けてしまえば何も残らないしホコリが舞うこともない。圧送システムを車両に搭載する移動式だ

       
日本のマイナーツーリング史に4バルブDOHCを積むKP47スターレットが存在したことをご存じだろうか? 本誌では何度か紹介してきたが、この車両で活動したトムスが復元プロジェクトを立ち上げていた。なにしろ無敵のツーリングカー、その勇姿を再び目にできるのはうれしいことだ。復元作業が始まった2017年当時、ノスタルジックヒーローは密着取材を試みた。

【1-3 1973年の富士GCシリーズの最終に現れたマシン KP47DOHCスターレット復元作業 byトムス】

【2】から続く

 そして復元の土台となるKP47を見せてもらった。これがなかなか程度良好で、40年前の車両と考えれば上出来と言えるかもしれない。すでにベアボディの状態で、取り外されたパーツは部位ごとに整理されていた。

 トムスの強いところは、クルマ1台を丸々造れてしまう技術と設備を持つことだ。ないパーツは作ればいい? と無責任にも水を向けてみたら「コストの問題もありますからなかなかそうもいきません」とのこと。たしかに。

 この状態から復元プロジェクトの手順を聞いてみた。まず、ブラストをかけて汚れやサビを落とし、アンダーコートを落とし、修復の必要な個所には手を加え、下地処理をした上でカラーリングを施す、という内容だった。

>> 【画像21枚】ベースボディの検証風景や、トムスが保管・管理していた137E型エンジンなど


 気になる修復期限については、「実は富士スピードウェイから50周年記念イベント(2017年3月)で走ってくれないか、との打診があったんですけどとても無理。逆に年末のTGRF(トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバル)に間に合ってくれれば。そんなつもりで作業を進めています」

 こうした話を聞いた後、2回目の取材でブラスト作業に立ち会うことができた。一般的にイメージするのはサンドブラスターだが、トムスは環境と車両に対する影響を考え、まだ珍しいドライアイスブラスターを導入した。

 もちろんトムスが設備を導入したわけではなく、専業業者に依頼しての作業で、高圧コンプレッサーを持つ作業車を持ち込んでの出張作業である。

 てっきりボディのみの作業と思っていたら、ホーシングやリーフスプリングなどにも適用。またたく間にきれいになっていく様子は、知らぬこととはいえ、これは新鮮な発見だった。



>> サビ落とし何とドライアイスブラスター これがドライアイスの粒。円柱形で大きさは米粒と同じぐらいだろうか。溶けてしまえば何も残らないしホコリが舞うこともない。圧送システムを車両に搭載する移動式だ。




>> まさに使用前、使用後の対比となる。磨き落とす、削り落とすという印象はなく、ていねいにぬぐい落としたような表面だ。この状態になって外板表面の良否が見えてくる。やはり状態はよかった。




>> 【画像21枚】ベースボディの検証風景や、トムスが保管・管理していた137E型エンジンなど


初出:ノスタルジックヒーロー 2017年12月号 Vol.184
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

サニー、シビックがかなわなかった史上最強のマイナーツーリングカー、KP47スターレット(全3記事)

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【1】【2】から続く

text & photo:AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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