HIROTA東名サニー【6】弊社のエンジンはカムが命。東名パワード代表 鈴木修二氏インタビュー|1972年式 日産 サニー クーペ GL(B110)|珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る

お話をうかがったのは、鈴木誠一さんが他界した後も東名自動車をけん引してきた実弟の修二さん。5人兄弟の2番目で、中学生の頃からオート3輪を乗り回していたとか!?

       

珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る
TSレースを席巻した東名サニー

ツインカムと対抗できるくらい
A型エンジンは速かった!

クルマ好き、そしてレース好きな仲間がいたからこそ、50年という長きにわたってパーツの供給を続けてこられたと語る、東名パワードCEOの鈴木修二さん。ここでは東名とサニー、そしてA型エンジンにまつわる思い出をうかがった。

【 1972年式 日産 サニー クーペ GL Vol.6】

【5】から続く


 東名自動車(現東名パワード)は1968年に私の兄である鈴木誠一が創業した会社です。もともとは2輪のレースをしていて、城北ライダーズという名門チームで活動していましたが、いい歳になってきたので、ちゃんと食えることをしようと4輪へと転向したようです。

 設立当初は小さな会社で、いろいろな出来事もありました。神奈川県川崎市梶ケ谷にガレージを構えたのですが、2〜3年で立ち退きにあい、川崎市宮前区野川に移転。しかし、そこも同じように開発の波に飲まれて、1994年に現在の東京都町田市へと移りました。

 当初は2輪で培った技術を生かしてフォーミュラカーにA10型を乗せるなどして走っていたのですが、これが3ベアリング式ということでよく壊れましたね。ストックカーレースではSP310用のR型エンジンに載せ換えたセドリックでシリーズチャンピオンになり、そのご褒美にとアメリカのレースにも招待されていました。

 それからB110サニーが発売されたので、まだスポーツ用パーツも何もなかったのですが、とりあえずクルマを作ってレースに参戦してみようかと。これが思いのほか性能がよかった。富士の「ストックカー富士200マイルレース」でのデビュー戦でカローラ勢に勝ってからは、その速さが評価されて、関東で唯一の日産のモータースポーツ指定店にも選ばれました。

>>【画像10枚】さまざまなカテゴリーのレースに参戦した東名パワード(旧東名自動車)の創設者である鈴木誠一氏

 振り返ると、とにかく猛烈に忙しい会社でしたね。兄貴も昼は日産、夜は東名といった感じで休むヒマもなく働いていたし、徹夜も当たり前でした。夜12時より早く帰れる日はなかったんじゃないかな。それでも当時は、レースをやりたいから雇ってくれという若者が後を絶ちませんでした。みんな家財道具を持ってきて、押しかけてきましたから。

 そのうちA型をイジるチューナーも増えてきて、TSレースはサニー一色となりました。トヨタもこれに対抗して、KP47スターレットのツインカム仕様を投入してきたくらいです。それでも対等に戦えるくらいA型エンジンは速かったですよ。

 弊社のエンジンはカムが命と考えていて、昔はひとつずつグラインダーで削っていましたね。そのうち日産から払い下げのカム研磨機が導入されて、開発スピードが一気に上がりました。もちろん、今でもハイカムは当社の重要なパーツのひとつとなっています。

 兄の鈴木誠一が会社を立ち上げてから、早いもので50年の節目を迎えました(2019年取材時)。今後もなにとぞ東名パワードのパーツをご愛顧いただけますよう、よろしくお願いします。




>> 東名パワード(旧東名自動車)の創設者である鈴木誠一さんは、さまざまなカテゴリーのレースに参戦。後輩の面倒見もよく、星野一義、高橋健二両選手など、鈴木誠一さんに見い出されて花を咲かせた往年のレジェンドレーサーも決して少なくない。





TOMEI POWERED 鈴木修二CEO
お話をうかがったのは、鈴木誠一さんが他界した後も東名自動車をけん引してきた実弟の修二さん。5人兄弟の2番目で、中学生の頃からオート3輪を乗り回していたとか!? 


1972年式 サニー クーペGL(KB110)

SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:TOMEI製フロントスポイラー/リアスポイラー、NISMO仕様オーバーフェンダー、FRP製ボンネット/フロントフェンダー/オーバーフェンダー/ドア/トランクリッド、アクリル製ウインドー(フロント合わせガラス)/ビタローニ製セブリングミラー
■エンジン:A12型改1303cc(約170ps/8500rpm)、TOMEI製φ77mm鍛造ピストン/H断面コンロッド/4カウンタークランクシャフト/PROCAM(312°、7.75mmリフト)/バルブスプリング(ダブル)/軽量タイププッシュロッド/0.8mmメタルヘッドガスケット(対向ビート)、ビッグバルブ(INφ40mm/EXφ33mm)、NISMO製メインベアリング/コンロッドベアリング/中空バルブリフター、リン青銅製バルブガイド
■吸気系:TOMEI製インテークマニホールド、ウエーバー45DCOE9、
■排気系:TOMEI製エキゾーストマニホールド/ワンオフ右サイド出しマフラー
■点火系:永井電子機器製MDI NO.9500/プラグコード、クランクピックアップ式(オルタレス仕様)、NGK製R7433-10
■冷却系:アクアガラージュ製ラジエーター、セトラブ製オイルクーラー
■燃料系:ATL製燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ(2基)、TOMEI製コレクタータンク
■駆動系:ORC製レーシングコンセプトクラッチ、純正レースオプションF56Aミッション、NISMO製H150 LSD、ホーシング加工(デフオイル容量アップ)
■サスペンション:(F)レースオプション車高調改、ピロボール式Aアーム、レース用スタビライザー (R)レースオプションリーフスプリング
■ブレーキ:MK63キャリパー、プロジェクトμ製ブレーキローター/パッド
■インテリア:MOMO製プロトティーポステアリング、スミス製機械式タコメーター、ラムコ製メーター(水温、油温、油圧)、NGK製A/Fデジタルメーター、SARD製排気温度計、オートルック製バケットシート、HPI製5点式ハーネス、ガレージアルティア製ロールケージ
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:
RSワタナベ8スポーク マグ Rタイプ(F)13×8J (R)13×9J

【7】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 サニー クーペ GL(全7記事)


関連記事:珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る

関連記事:サニー



【1】【2】【3】【4】【5】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

RECOMMENDED

RELATED

RANKING