HIROTA東名サニー【3】完成から20年、更に進化を続けるレーシングマシン|1972年式 日産 サニー クーペ GL(B110)|珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る

TOMEIのエンボス処理が施されたアルミ製のタペットカバー。A型乗りのお宝アイテム

       

珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る
TSレースを席巻した東名サニー

TSレースの舞台で圧倒的な存在感を放ったサニー。その先駆者ともいえるのが、「トランズ・ニックス第一戦富士100キロ・レース」で鮮烈なデビューを飾った東名自動車(現東名パワード)のB110である。A型チューンの礎を築いた1台といっても過言ではない。そして伝説は今もこの復刻マシンへと受け継がれている。その全ぼうを紹介していこう。

【 1972年式 日産 サニー クーペ GL Vol.3】

【2】から続く

 そして産声をあげた「HIROTA東名サニー」。その完成からさらに20年の歳月を経た現在(2019年取材時)も、JCCAをはじめとするクラシックカーレースで、並々ならぬ存在感を放っている。当時のスペックを踏襲しつつ、いまだ進化を続けているというのだからすごい。

 搭載されるエンジンはА12型改1303ccである。キャブレターはウエーバー45DCOE9で、最高出力は約170㎰に達する。純正ストローク仕様となるこのユニットは、いざ回そうと思えば1万rpmも許容する。しかし、主戦場となる富士スピードウェイも度重なるコース改修が行われ、昔とは異なるパワー特性が求められるようになった。現在の富士では、最高回転より中間トルクを重視したほうが速いため、常用回転域は8000〜9000rpmに設定している。

 ヘッドは楕円ポートを採用したGX用がベースだ。ポート径はもともと大きいため、段付き修正をしているくらい。ただし燃焼室はキッチリと容積合わせしたうえでビックバルブ化(IN:φ40mm、EX:φ33mm)。高回転化にともない、シートリングは放熱性に優れたベリリウム鋼に打ち替えられている。

>>【画像40枚】A14型改1.3L仕様のエンジンを積み込む。キャブレターはウエーバー45DCOE9。無駄を一切排除したエンジンルームだが、仕上げは美しい

「А型は2番と3番の排気ポートが隣合わせのため、熱だまりができてしまうんです。約160psを超えてくるとそれが顕著。高熱でエキゾースト側のリングが歪んでしまいます。ベリリウムのシートリングを採用することで、その問題が解消しました」と教えてくれたのは、東名パワードの田原剛さん。

 東名仕様のA型エンジンの速さの要ともいえるハイカムシャフトは、現在は312度 7.75mmリフトを採用。圧縮比はさまざまなテストの結果、12.4:1に落ち着いた。メタルガスケットは抜けにくい対向ビードタイプで、厚さ0.8mmを選択。高回転での追従性に優れた2段不等ピッチのバルブスプリングを採用するなど、そのこだわりは枚挙にいとまがない。





>> ビックバルブ化すると燃焼室の形状は必然的に決まる。セミ機械加工の手仕上げだ。シートリングはベリリウム鋼に打ち替える。





>> 冷却水をしっかりと循環させるのも肝心。この車両ではヒーターの撤去に伴い、エンジンリア側にあるヒーター用の出口から、バイパスホースを使ってラジエーターのアッパーホース側へと熱くなった冷却水うを流している。


1972年式 サニー クーペGL(KB110)

SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:TOMEI製フロントスポイラー/リアスポイラー、NISMO仕様オーバーフェンダー、FRP製ボンネット/フロントフェンダー/オーバーフェンダー/ドア/トランクリッド、アクリル製ウインドー(フロント合わせガラス)/ビタローニ製セブリングミラー
■エンジン:A12型改1303cc(約170ps/8500rpm)、TOMEI製φ77mm鍛造ピストン/H断面コンロッド/4カウンタークランクシャフト/PROCAM(312°、7.75mmリフト)/バルブスプリング(ダブル)/軽量タイププッシュロッド/0.8mmメタルヘッドガスケット(対向ビート)、ビッグバルブ(INφ40mm/EXφ33mm)、NISMO製メインベアリング/コンロッドベアリング/中空バルブリフター、リン青銅製バルブガイド
■吸気系:TOMEI製インテークマニホールド、ウエーバー45DCOE9、
■排気系:TOMEI製エキゾーストマニホールド/ワンオフ右サイド出しマフラー
■点火系:永井電子機器製MDI NO.9500/プラグコード、クランクピックアップ式(オルタレス仕様)、NGK製R7433-10
■冷却系:アクアガラージュ製ラジエーター、セトラブ製オイルクーラー
■燃料系:ATL製燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ(2基)、TOMEI製コレクタータンク
■駆動系:ORC製レーシングコンセプトクラッチ、純正レースオプションF56Aミッション、NISMO製H150 LSD、ホーシング加工(デフオイル容量アップ)
■サスペンション:(F)レースオプション車高調改、ピロボール式Aアーム、レース用スタビライザー (R)レースオプションリーフスプリング
■ブレーキ:MK63キャリパー、プロジェクトμ製ブレーキローター/パッド
■インテリア:MOMO製プロトティーポステアリング、スミス製機械式タコメーター、ラムコ製メーター(水温、油温、油圧)、NGK製A/Fデジタルメーター、SARD製排気温度計、オートルック製バケットシート、HPI製5点式ハーネス、ガレージアルティア製ロールケージ
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:
RSワタナベ8スポーク マグ Rタイプ(F)13×8J (R)13×9J

【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 サニー クーペ GL(全7記事)


関連記事:珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る

関連記事:サニー



【1】【2】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

RECOMMENDED

RELATED

RANKING