HIROTA東名サニー【4】テストを重ねていくうちに、気付けば当時仕様に戻っていることも!|1972年式 日産 サニー クーペ GL(B110)|珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る

無駄を一切排除したエンジンルームだが、仕上げは美しい

       

珠玉のOHVユニット A型チューンの真髄に迫る
TSレースを席巻した東名サニー

TSレースの舞台で圧倒的な存在感を放ったサニー。その先駆者ともいえるのが、「トランズ・ニックス第一戦富士100キロ・レース」で鮮烈なデビューを飾った東名自動車(現東名パワード)のB110である。A型チューンの礎を築いた1台といっても過言ではない。そして伝説は今もこの復刻マシンへと受け継がれている。その全ぼうを紹介していこう。

【 1972年式 日産 サニー クーペ GL Vol.4】

【3】から続く


 もちろん、腰下にも独自のノウハウを注ぎ込む。現在のボア×ストロークはφ77mm×70mm(1303cc)。オリジナルの試作・鍛造ピストンにH断面コンロッドを組み合わせる。注目すべきは1万rpm対応のクランクを新たに投入していること。というのも、純正ベースに表面処理を施しても9500rpmが限界で、それ以上回すとクランクピンの付け根に亀裂が生じた。

 そこで新たに設計したクランクでは、オイル穴の通し方を工夫。肉厚が薄くならないよう、できるだけクランクの中心に穴を開けることで強度を確保しつつ、ピストンが上支点に達する直前に遠心力でオイルを噴射できる形状とし、メタル焼き付きを予防した。

 もちろんエンジン性能を最大限に引き出すには、周辺パーツの効率アップも欠かせない。たとえば吸排気。ターンフローとなるА型ではインマニとエキマニが同じ助手席側にあるためスペースのせめぎ合いとなる。

>>【画像40枚】穴開け加工をして軽量化したトランクリッドステーなど。こうした細かい積み重ねで車重を絞り込む

「スムーズに空気を流そうとインマニを立てていっても馬力はほとんど変化しませんでした。しかし、エキマニは形状や太さを変えると大きな影響を及ぼします。これはA型の排気ポートが90度曲っているのが大きい。そこでこのマシンではインマニよりエキマニの効率を重視したレイアウトとしました」

 当時は職人による手曲げだったが、現在は機械曲げによる等長・等容積タイプのエキマニはパイプ径をφ38mmに設定。集合部を若干絞りトルクを稼ぐ。

「もっと太いφ42.7mmも試しましたが、ピークが2〜3㎰上がる代わりに中間域で10㎰ほど失われてしまう。結局、バランスを考慮すると昔と同じφ38mmが最適という結論に達しました。テストを重ねていくうちに、気付けば当時仕様に戻っていることは多いですね。恐らく、50年前もいろいろ試したんだと思います」




>> 4カウンタークランクシャフト 高回転・高出力化を進めていくと耐え切れなくなってくる純正クランク。そこで東名では4カウンター式の強化品を開発中。オイル穴の通し方や肉厚にまでこだわった。





>> エキゾーストマニホールド ステンレス製エキマニはパイプ径φ38→φ57.0mmの等長・等容積タイプ。集合部をテーパー形状にすることでトルクを確保したのもミソだ。6000rpmで一番トルクが出るとか。


1972年式 サニー クーペGL(KB110)

SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:TOMEI製フロントスポイラー/リアスポイラー、NISMO仕様オーバーフェンダー、FRP製ボンネット/フロントフェンダー/オーバーフェンダー/ドア/トランクリッド、アクリル製ウインドー(フロント合わせガラス)/ビタローニ製セブリングミラー
■エンジン:A12型改1303cc(約170ps/8500rpm)、TOMEI製φ77mm鍛造ピストン/H断面コンロッド/4カウンタークランクシャフト/PROCAM(312°、7.75mmリフト)/バルブスプリング(ダブル)/軽量タイププッシュロッド/0.8mmメタルヘッドガスケット(対向ビート)、ビッグバルブ(INφ40mm/EXφ33mm)、NISMO製メインベアリング/コンロッドベアリング/中空バルブリフター、リン青銅製バルブガイド
■吸気系:TOMEI製インテークマニホールド、ウエーバー45DCOE9、
■排気系:TOMEI製エキゾーストマニホールド/ワンオフ右サイド出しマフラー
■点火系:永井電子機器製MDI NO.9500/プラグコード、クランクピックアップ式(オルタレス仕様)、NGK製R7433-10
■冷却系:アクアガラージュ製ラジエーター、セトラブ製オイルクーラー
■燃料系:ATL製燃料タンク、NISMO製燃料ポンプ(2基)、TOMEI製コレクタータンク
■駆動系:ORC製レーシングコンセプトクラッチ、純正レースオプションF56Aミッション、NISMO製H150 LSD、ホーシング加工(デフオイル容量アップ)
■サスペンション:(F)レースオプション車高調改、ピロボール式Aアーム、レース用スタビライザー (R)レースオプションリーフスプリング
■ブレーキ:MK63キャリパー、プロジェクトμ製ブレーキローター/パッド
■インテリア:MOMO製プロトティーポステアリング、スミス製機械式タコメーター、ラムコ製メーター(水温、油温、油圧)、NGK製A/Fデジタルメーター、SARD製排気温度計、オートルック製バケットシート、HPI製5点式ハーネス、ガレージアルティア製ロールケージ
■タイヤ:ヨコハマ アドバンスリック(F)210/490/13 (R)230/500/13
■ホイール:
RSワタナベ8スポーク マグ Rタイプ(F)13×8J (R)13×9J

【5】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.019 2019年2月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 サニー クーペ GL(全7記事)


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【1】【2】【3】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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