マクランサ。オリジナルカーは現存せず、車両はすべて復刻車|半世紀にわたる伝説「童夢」の生き証人 P-2 & マクランサ Vol.4

半世紀にわたる伝説「童夢」の生き証人 P-2 & マクランサ

       
半世紀前カスタムレーシングカー「カラス」でレース界に参入。
40年前カスタムカー「童夢-零」で童夢を起業した林みのる。
日本のモータリゼーション史において伝説的存在の童夢は名車の数々を輩出。
そのうち節目の車両、P-2とマクランサが姿を現した。童夢にかかわる歴史プロジェクトを推進する
2016年「アウト ガレリア ルーチェ」が手掛ける2台で鈴鹿ツインサーキットを実走。
当日現場を訪れた当事者、林みのるも感慨深げな様子だった。

【半世紀にわたる伝説「童夢」の生き証人 P-2 & マクランサ Vol.4】

【3】から続く

 ボディフォルムは強いウエッジシェイプ。当時、空力的には理想と思われた形のひとつで、ボディ前端からルーフトップまで、鋭い傾斜でラインが一気に駆け上がる。このためフロントウインドーは、正面から見ると面積の広い台形を形成。ランチア・ストラトスのプロトタイプ、ベルトーネのデザインスタディと似た印象も受ける。

 停止状態で動感を与えるデザインだが、実際に走る姿は、シャープで機能的な印象を受けた。ジェット戦闘機にたとえるのは過大かもしれないが、低い車高のせいで安定感すら感じさせるものだった。

 実際には、全力走行でなく流して走る状態だったが、クルマは走ってなんぼ、という言葉が聞こえてきそうな光景が眼前で展開。可動状態で歴史的名車が保存されることはうれしい限りで、時おり元気な姿を見せてくれたら何も言うことはなし、そんなふうに思わせてくれるデモランだった。


ホンダS800ベースのマクランサ

一方、P‐2に随伴して走ったマクランサ。マクランサは、ホンダS800ベースのボディ換装式オープン2シーターレーシングモデルで、オリジナルのスチールボディを降ろし、林みのる製作によるFRPボディを架装して1967年に登場。林みのる製作のオリジナルカーは現存せず、現在ある車両はすべて復刻車にあたる。しかし、ボディ型があったことで現在もマクランサの勇姿を見られるわけだから、歴史保存という意味では非常に有意義なことかもしれない。


>>【画像15枚】独立シャシーを持つがゆえにボディ換装が可能となったマクランサ。ノーズ高を下げる苦肉の策であり、特徴的なパワーバルジなど


 本来は、モノコックタブもFRP整形となるはずだったが、諸般の事情(失敗!)によりS800のスチールシャシーを活用。しかし、レース実績を見ると、軽量化と空力的な改善により、オリジナルのS800と比べ高い戦闘力を発揮。架装ボディとはいえ、ここまで形のしっかりとした物を造り、残したレース戦績を考えれば、紛れもなく日本のカスタムレーシングカーの先駆者といえる存在だろう。
(文中敬称略)




独立シャシーを持つがゆえにボディ換装が可能となったマクランサ。ノーズ高を下げる苦肉の策パワーバルジが特徴的だ。





軽快な2シータースポーツのような印象を与えるリアビュー。無用に高く見えるロールバーはおそらく当時の規定に従ったものだ。





フロアトンネルの張り出しで仕切られた部分にバケットシートを収め、正面にメーター類を配置したコクピットは非常にシンプルだ。




初出:ノスタルジックヒーロー 2016年12月号 vol.178(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

半世紀にわたる伝説「童夢」の生き証人 P-2 & マクランサ(全4記事)

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【1】【2】【3】から続く

text & photo:AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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