スポーツ500よりもスポーツ360の発売を待ち焦がれる来場者が多かった!? 第9回全日本自動車ショー|1962年式 ホンダ スポーツ360 Vol.3|痛快スポーツモデル

写真や雑誌の資料などを参照しながら製作された内装。S600のパーツを利用しているが、流用を感じさせない新しく発売されたクルマのような雰囲気を持つ。

       
【1962年式 ホンダ スポーツ360 Vol.3】

 「特振法がなければS360として発売されていた」と語られることも多いが、実際にはスポーツカーとしてのパワー不足が指摘されており、社内でもこのまま発売することに疑問を持つ社員が多かったという。それはスポーツ500も同じで、最終的に531ccまで排気量をアップし、S500として1963年10月に発売されたが(実際の納車は64年1月から)、その後もパワー不足は社内およびユーザーから指摘され続け、S800が登場するまでパワーアップは続けられたのである。


 自動車ショー出展の際は、スポーツ500よりもスポーツ360の発売を待ち焦がれる来場者が多かったという。それから50年の時を超えて、我々の前に現れたスポーツ360は、当時とは別の驚きと感動をもって迎えられた。ただ一つ残念なのは50年前と同じで、誰の手にも渡ることのないクルマだということだけだ。

 今回復刻されたのは、ショーに出展されたスポーツ360である2XAS250型(復刻プロジェクトの内容については4月15日(木)から掲載予定)。

T360用のXAK-250型を流用。15度傾け搭載したエンジンなど【写真7枚】


DETAIL/ロータス・エリートからはじまった軽量スポーツカー開発

 ホンダが最初のクルマにスポーツカーを選んだ理由は、最後発であるがゆえ市場に対するアピールが必要だったことがあげられる。

 しかし、本田宗一郎さんをスポーツカー開発へと動かしたのは1台のクルマではないかと噂されている。実は61年に本田宗一郎さんはジャガーXK120からロータス・エリートに乗り替えている。

 エリートに乗ったことで、軽量スポーツカーへの情熱をかき立てられたのではないかと言われている。実際、スポーツ360のステアリングをエリートと同じようなものにしろと宗一郎さんが指示し、製作したがあまりに不安定だったのでコーン状に戻した経緯があるのだ。

 エリートの存在は、名車Sの誕生に少なからず影響を与えていたようだ。



SPECIFICATIONS 主要諸元
1962年式 ホンダ スポーツ360(AS250)
●全長 2990mm
●全幅 1295mm
●全高 1146mm
●ホイールベース 2000mm
●最低地上高 160mm
●車両重量 510kg
●乗車定員 2名
●最高速度 120km/h以上
●登坂能力 1/5
●最小回転半径 4.2m
●エンジン種類 水冷直列4気筒4サイクルDOHC
●総排気量 356cc
●ボア×ストローク 49.0×47.0mm
●最高出力 33ps/9000rpm
●最大トルク 2.7kg-m/7000rpm
●燃料タンク容量 25L
●ステアリング形式 ラック&ピニオン
●サスペンション前/後 ウィッシュボーン・トーションバー/トレーリングアーム・コイルスプリング
●ブレーキ リーディングトレーリング形式油圧ドラムブレーキ
●タイヤ 前後とも5.20-12-2PR

初出:ノスタルジックヒーロー 2014年7月号 Vol.163(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1962年式 ホンダ スポーツ360(全3記事)

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photo : ISAO YATSUI/谷井 功

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