L10B【3】出会いは物心がついたころ! 父親から受け継いだコスモスポーツの乗り方の儀式を今でも守り続けてコンディションを維持する|1969年式 マツダ コスモスポーツ L10B

取材車両のオーナー。筋金入りのロータリーマニアだ

【2】から続く

オーナーが語るに、コスモスポーツの魅力は生産管理によるプロダクト化やコストダウンとは無縁の特別感を持っていることだ。重量配分、足回りなど変わった構造になっており、一級品のコーナリング性能であるという。実際に、オーナーがドイツのAUTOBAHNで走行した時も、高速度でもコーナリングと巡航速度は良かった。

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 さて、オーナーとこの個体との出合いだが、実は物心ついたころから自宅にあったという。幼少のころ家族4人でよくドライブをしたことを鮮明に記憶していた。シート裏のスペースに妹と2人で収まるのがいつものパターンだったという。しかしその記憶は40年前に突如として消えてしまう。それは、この個体を大切にしてきた父親の判断で、倉庫保管としてしまったからだ。しかし21世紀を前にオーナー自身が、18年間の眠りから復活させている。20世紀の宝がよみがえった瞬間だ。マツダ愛が目覚めたのも、このコスモスポーツが長く家のクルマとして存在していたからに他ならない。RX‐7を所有し、さらにはマツダのディーラー勤めもした筋金入り。もちろんそんな経験から、復活後もこのクルマのメンテナンスはマツダのディーラーで行っているという。

 なお、父親からこのクルマを譲り受ける時には、コスモスポーツを運転する心得と、スタート時の儀式(イグニッションオンして燃料ポンプが安定して回り出したら、アクセルを2〜3回あおってから、クラッチを切る。それからセルを回してスタートする)を教わったという。今でもこれを頑なに守り続けており、大切に乗り続けているのだ。

 コンディションは、ほぼストック状態を保っており、オリジナルカラーのレッドも補修なしで維持している。オーナーにとって、乗っても、ながめても愛してやまない、よき伴侶となっているのだ。
【画像22枚】コスモスポーツ独自の特徴としてステアリングリンケージごと、やや右側にオフセットされて室内に配置されている。そのため運転には慣れが必要だという。ウッドのステアリングはナルディ製だが、ストックのパーツだ。型式プレートには、後期型のL10Bの車台番号が記されている



>>タイヤは後期型なので、15インチのものを装着。サイズは175/65R15とストックより太めのサイズとなっている。ホイールは、ノーマルの鉄ホイールを完全コピーしたワンオフ製作のアルミホイール。



>>経年劣化など劣化が一切ない個体で、デザインの秀逸さを訴求する美しいプロポーションは現役。カラーリングはストック状態のままというから、さらに驚きだ。

OWNER’S VOICE

ロータリーエンジンのとりことなったきっかけのクルマ

オーナーは、筋金入りのロータリーマニアとして知られている。そのきっかけがこのクルマで、すでに20年を越えて所有する。パーツはないし、簡単に乗りこなせるクルマでもなく、特殊なクルマだという。しかしそのネガティブさもオーナーにとっては楽しいのだ。コスモスポーツ乗りとしての年季が違うのだ。

主要諸元 SPECIFICATIONS
1969年式 マツダ コスモスポーツ L10B

全長 4130mm
全幅 1590mm
全高 1165mm
ホイールベース 2350mm
トレッド前/後 1260/1250mm
最低地上高 125mm
室内長 870mm
室内幅 1300mm
室内高 990mm
車両重量 960kg
乗車定員 2名
最高速度 200km/h
登坂能力 tanθ0.553
最小回転半径 5.2m
エンジン型式 10A型
エンジン種類 水冷2ローター・ロータリー
総排気量 491cc×2
圧縮比 9.4:1
最高出力 128ps/7000rpm
最大トルク 14.2kg-m/5000rpm
変速機 前進5段・後退1段 前進フルシンクロメッシュ
変速比 1速3.379/2速2.077/3速1.390/4速1.000/5速0.841/後退3.389
最終減速比 4.111
燃料タンク容量 57L
ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション前/後 独立懸架筒型複動オイルダンパー・コイルバネ/筒型複動オイルダンパー半楕円形板バネ
ブレーキ前/後 ディスク/リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 155HR15ラジアル
発売当時価格 158万円

【1】【2】から続く

1969年式 マツダ コスモスポーツ(全3記事)
初出:ノスタルジックヒーロー 2020年4月号 Vol.198

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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TEXT:Nostalgic Hero/編集部 PHOTO:Isao Yatsui/谷井功

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