「もしこのクルマのエンジンが壊れたら、新しいクルマは買わないわ。同じエンジンに載せ替えるの」|米国内で活躍する日本車 ヨセミテのスバルレガシィ【3】

ホテルの前庭は除雪されていたがアスファルトの表面は凍結しており、通常ならタイヤチェーンが必要。だが、こんなコンディションに4WDにスタッドタイヤの組み合わせはまさに鬼に金棒。マクエバーさんの鹿が衝突したというクルマ左側後方の部分には眼で確認できるようなダメージは残っておらず、きれいなボディラインを保っていた

【2】から続く

レガシィの発売は重要なターニングポイント。89年にレガシィを市場へ送り出したことにより、水平対向4WDというスバルのブランドイメージを確立したのだ。そしてその人気は北米市場へまで続いている。

【米国内で活躍する日本車 ヨセミテのスバルレガシィ vol.3】

【画像12枚】バンパーに貼ってある赤い文字の「FIRE DEPT.」のステッカーは地元消防団のもの。マクエバーさんの個体はリアのデフ周りは比較的きれいな状態を保っていたが、フロントのエンジン。下部周辺はオイルが付着しているように見えた。

マクエバーさんの職場での担当は、リネン(ベッドシーツ類)とタオルのランドリーサイクルの管理と、毎日の部屋の準備状態の確認を受け持つマネージャー。

「リネンとタオルは使用中、使用済み、洗濯済みと3セットあります。それを過不足なく毎日回転させて、ベッドメークした部屋をチェックして回る。早朝から洗濯機を回すのを手伝って、すべての部屋の準備ができあがる午後まで働きます」

仕事が休みの火曜日と水曜日は、息子のアンドレ君と過ごす時間だ。マクエバーさんの顔がほころんだ。

「最初の子供から17年も開けて2人目ができたのよ。全然予期してなかったのに。今でもおしゃべりして一緒に笑ったり、子育ては楽しいわ」

16歳のアンドレ君はまだクルマの運転を始めていない。仕事が休みの日にはマクエバーさんが学校へ送迎している。ある日、学校へ送った帰りにマクエバーさんがレガシィを運転していると、突然ドスンとクルマに大きな衝撃を感じた。

「空から何か落ちて来たのかと思いました。何が起こったのか、と近くを歩いていた学校の生徒に聞いたら、大きな鹿がクルマにぶつかったって言うんですよ。鹿がいるような場所じゃなかったのに。でもね、被害はリアクオーターウィンドウが割れただけなの。このスバルはね、なかなか頑丈なクルマですよ」

普段はレガシィにはトラブルの気配はまったくないという。ただし季節の変わり目のオイル交換と足回りの点検、タイヤ交換は欠かさない。クルマにも癖があるのね、とダッシュボードで時々点灯するという緑のランプを指して、何度点検しても点灯の原因はよく分からないんです、と言った。

「もしこのクルマのエンジンが壊れたら、新しいクルマは買わないわ。同じエンジンに載せ替えるの。だってこのクルマは乗っていてとても安全な感じがするんですもの。安定していて安心できる。これからもずっとこのスバルを運転していくと思う」

毎日が厳しい環境だからこそ、クルマの信頼性が試される。そしてユーザーの信用が得られていく。こうしてアメリカでもスバリストが増殖中なのだ。

>>マクエバーさんは定期的なオイル交換と足回りのチェックを欠かさない。「ポールがいつも見てくれるの」と馴染みのショップに信頼するメカニックがいる。隅々に溜まった枯れた松葉のことはあまり気にしていないのだろう。次はヘッドライトのレンズの黄ばみを取りたいそうだ。

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>>ホテルのロビーにてスタッフの1人カーソン・ホルチェクさんと。年季を感じさせる木造の味のある建物がこのホテルの自慢だ。内装は2代目オーナーが大規模な階層を行ったという。分厚い木のドアを外から開けると、暖房の暖かさだけでなく、木のぬくもりまでも伝わってきた。
【1】【2】から続く

米国内で活躍する日本車 ヨセミテのスバル・レガシィ(全3記事)
初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
関連記事:スバル レガシィ

TEXT & PHOTO : HISASHI MASUI / 増井久志

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