水平対向4WDという確固たるスバルのブランドイメージを確立させたレガシィ|米国内で活躍する日本車 ヨセミテのスバルレガシィ【2】

凍結した雪道をものともせず力強く走るマクエバーさんのスバルレガシィに、4WDの真の実力を感じた。その実力があるからこそ、スバル車の姿は大自然の風景によく似合う。雪に紛れそうな白色のボディも、景色の中でむしろ映えて見えるほどだった

【1】から続く

取材地はアメリカの山間部。ここで1991年式のスバルレガシィを乗り続けているアメリカ人のオーナーがいた。オーナーが住んでいる地域は雪が多く降り、アスファルトまで凍結してしまうほど寒い。したがって雪道を走ることが多い。だからこそ4WDのレガシィは安心して乗れるので重宝しているとのこと。

【米国内で活躍する日本車 ヨセミテのスバルレガシィ vol.2】
【画像12枚】アスファルトの表面が凍結しているコンディションに4WDにスタッドタイヤの組み合わせはまさに鬼に金棒。マクエバーさんの鹿が衝突したというクルマ左側後方の部分には目で確認できるようなダメージは残っておらず、きれいなボディラインを保っていた

スバル レガシィの登場は1989年。それはとてもセンセーショナルだった。彗星の如く現れたレガシィステーションワゴンは、それまでダサいこと極まりない商用車のライトバンと混同されていたワゴンという車種を、乗用車として世に認識させ、さらにそのスポーティなイメージをもって一世を風靡した。

元来スバルが4WDで有名になったのは、量産四輪駆動乗用車を世界に先駆けて世に送り出したことにある。72年の「レオーネ4WDエステートバン」がそれで、原型となったのは「ff-1 1300Gバン」に、業務提携関係にあった日産のブルーバードのリヤアクスルを装着した改造4WD車だった。乗用4WDというカテゴリーは今でこそ当たり前のように存在するが、そもそもは顧客の要望をきっけかにスバルが独自に創出したカテゴリーだったのだ。

もう一つの特徴である水平対向エンジンをスバルが開発したのは、今から50年前のこと。スバルの将来を決めることとなったこのエンジンの搭載車は1000/ff-1、次いでレオーネへと引き継がれた。ところが前述の画期的な乗用4WD車を開発しながらも、80年代後半に入るとスバルはメーカーとして苦境を迎えていたと言われる。今日第1世代と呼ぶ水平対向エンジンと、旧態然としたプラットフォームをレオーネまで使い続け、今一つ垢抜けないブランドイメージに甘んじていた。

1989年にレガシィを市場へ送り出すとそれは一変した。水平対向4WDという確固たるスバルのブランドイメージが確立したのだ。以後のスバルの快進撃は、今日の北米市場での大人気へと続いている。水平対向エンジンの世界的メーカーのポルシェが、得意としている6気筒に加えて4気筒ターボを導入した今、スバルとの競合関係はますます楽しくなりそうだ。


>>室内をのぞいてみると、80年代にアメリカの安全基準で導入された自動シートベルトが目を引いた。シートベルトの一端がドアの開閉に連動してAピラーに沿って肩の部分まで移動する仕組みになっている。腰を固定する部分のベルトは分割されていて、そちらは手動で装着する。インテリア全体に傷みは見当たらなかったが、シートには大きなシミがついていた。「夏に缶ジュースをおいて駐車していたら、缶が破裂したのよ。砂糖でベタベタにいなったわ」。なんともアメリカ人っぽいというか、おおらかなエピソードだ。
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【3】へ続く

米国内で活躍する日本車 ヨセミテのスバル・レガシィ(全3記事)
初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
関連記事:スバルレガシィ

TEXT & PHOTO : HISASHI MASUI / 増井久志

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