見たことのない車台番号、存在しないボディカラーに普通なら付かないであろう跡。この車両は一体?|1989年式 日産 キャラバンコーチ リムジン エグゼクティブオフィス【2】

こちらがコンセプトカー「エグゼクティブオフィス」の室内の写真で、ゴージャスなキャプテンシート1脚が中央に鎮座。コンセプトは「走るオフィス」。サイドの壁には小さなテーブルが付き、全席後ろ側にはテレビやAV機材が配置され、そのほか電話やFAX、クールボックスが装備されていたようだ

【1】から続く

取材車両のオーナーは16年前、中古車雑誌に載っていた取材車両に一目惚れし購入。長らく愛用していたがその後他のキャラバンを購入したため長期間放置。再び乗るためバラクーダ代表飯田さんにレストアを依頼し、車両について調べてみると「あやしい」ことが…

【ワンボックパラダイス 1989年式 日産 キャラバン コーチ リムジン エグゼクティブオフィス vol.2】

 まず車台番号。この個体はなんと2桁の10番台なのだ。通常、これほど小さい番号は製造テストなどで消化されるため市場に出回ることはない。どのような経緯で流出したのかは不明だが、存在しないはずの車両なのである。

 次に仕様。オーナーのアンテナにこの個体が引っかかった理由でもあるのだが、この年式(89年式)にはグリーンは存在しない。しかもこの個体はロイヤルとして販売されていたのだが、それは90年のマイナーチェンジ時に追加されたグレードだ。室内では、2列目シートのフロアに太いボルトがあり、サイドの壁側には「何か」が付いていたであろう跡が残っていた。こういった「?」な部分が多かったこともあり、飯田さんは八方手を尽くしてこの個体の真相を調べたのだった。

 そしてひとつの結論にたどり着く。この個体は89年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー、「エグゼクティブオフィス」なのではないか。実際、当時の資料にはグリーンのキャラバンが掲載されている。その仕様は2列目が取り外されて、大きく豪華なシートが一脚鎮座し、壁側には小さなテーブルが備え付けられている。フロアのボルトや壁の痕跡はそれだったのだ。この事実を知ったオーナーは手放すことをやめて、89年東京モーターショー仕様に復元することを決意。作業はバラクーダに全面的に任された。
【画像20枚】インパネはGTリムジン純正だが、前期にこのカラーリングはない。通常はブルーまたはレッドとなる。ちなみに中期でインパネまわりを曲線基調のデザインに一新している



>>当時物のダイバーシティアンテナは「優しい友人が用意してくれました」とオーナー。これらはすべて、レストアを機にコンセプトカーを再現するためにほど漕いた加工および装備だ。



>>搭載エンジンは3L・V型6気筒SOHCのVG30E型。ワンボックスにV型エンジンを搭載したのはE24が初。このほかZ20型2Lガソリン、TD27型2.7Lディーゼルおよびディーゼルターボ、LD20型2Lディーゼルターボを設定。

主要諸元 specifications
1989年式 日産 キャラバン コーチ リムジン エグゼクティブオフィス

全長×全幅×全高(mm) 4520×1690×1945
ホイールベース(mm) 2375
トレッド前/後(mm) 1450/1415
車両重量(kg) 1840
エンジン型式 VG30E型
エンジン種類 V型6気筒SOHC
総排気量(cc) 2960
ボア×ストローク(mm) 87.0×83.0
最高出力(ps/rpm) 155/5200
最大トルク(kg-m/rpm) 25.0/3200
サスペンション前/後 ダブルウイッシュボーン/リジッドリーフ
ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/リーディングトレーリング
タイヤ 205/65R15(前後とも)
※スペックはすべてGTリムジンのもの。

【3】へ続く

1989年式 日産 キャラバン コーチ リムジン エグゼクティブオフィス(全3記事)
初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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TEXT:Rino Creative/リノクリエイティブ PHOTO:AKIO HIRANO/平野陽

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