ただものではないオーラが漂うAE86トレノが榛名に集結【2】群馬県・榛名山が育むリアル「頭文字D」の世界

2年以上の歳月をかけ、ついに完成したご子息用の2号機。バンパーのウインカーレンズをホワイト化、グリル内には某ビデオマガジンのロゴを配するなど、随所に尊敬する土屋圭市さんへのオマージュが光る

       
今日もどこかで行われている「ロケ地をめぐる聖地巡礼」。作品に対するファンの愛情表現としてすっかり定着している。「頭文字D」における聖地といえば、秋名山(榛名山)。いまや押しも押されぬ人気スポットになったその場所に、劇中さながらのAE86トレノが出没、拓海に迫る走りを見せているという。

【 群馬県・榛名山が育むリアル「頭文字D」の世界 Vol.2】

【1】から続く

 「頭文字D」における聖地、秋名山のモチーフとなった榛名山。そんな榛名山に集結したAE86トレノ。
これら「3車3様」のパンダトレノは、ただ「藤原とうふ店」デカールを貼り、ワタナベ・ホイールを履いただけのエセ拓海仕様ではない。

「いずれの車両も、この榛名山にゆかりのある、リアル頭文字D仕様です」。以前ハチマルヒーロー本誌に登場していただいた、オーナーさんが胸を張る。

 飾って愛でるだけの車両にはない、現実に何百回と峠を走り込んできたであろうたたずまい。さらに驚いたのは、そのユーザー像だ。
 3名のオーナー中、ふたりの見た目は高校生といってもおかしくない若さがある。それもそのはず、19歳と18歳のコンビなのだ。さらに取材班を驚かせたのはそのひとりの名前は、頭文字Dの主人公と同じ。「榛名山をホームコースにしているパンダトレノに乗る拓海」が実在したのである。
「ボクは埼玉に住んでるんですが、毎週末、朝3時に出発して榛名に通っています」。そこまで榛名山に引かれる理由は何なのだろうか。

「AE86ほど、榛名に適したクルマはありません」。現代のクルマと比べ圧倒的な軽さと使い切れるパワー。最適なギア比とファイナル。そしてトレッド/ホイールベースの縦横比がもたらす「手の内感」。まさに榛名のためにあるマシンだと断言する。
 現在でも走り屋の聖地である榛名。さまざまなマシン、世代が集っているが、彼は親子ほど年齢の離れた先輩たちから榛名の攻略法を身体で学んでいる。そのなかにはAE86オーナーもおり、並外れたテクニックをもつ人たちも存在するという。
「ブレーキング、ライン取り、どれをとっても足元にも及ばない先輩がいます。ドラテクだけでなく、マシン作りにも助言してもらっています」

 おのずと榛名仕様を極めるためのセッティング能力も磨かれる。

 「先輩方は、ボクのタイヤのトレッド面を見ただけで、荷重のかかかり方=走り方を見分けます。あるときは、先輩の指示どおりにキャンバーを1度つけただけでグリップが激変したこともありました。榛名には神がたくさんいらっしゃるんです(笑)」

 現在の課題は、「ダウンヒルでロック寸前までブレーキングしたときシフトダウンのショックがリアサスに伝わり、わずかに横に動くんです。この動きを抑えて安定して踏めるように、現在6kg/mmのリアのバネレートを2kg/mm上げてみようと考えています」

 これが19歳の少年の口から出た言葉だと信じられるだろうか。リアル拓海くんの伸びしろの限界は、想像よりもずっと先のようである。

 聞けば、まだ学生である彼のアルバイト先は、ENEOSのSSだという。ちなみに藤原拓海のバイト先はコミックではESSO、新劇場版アニメではゼネラル、実写の劇場版ではESSOだった(ESSOのスタンドは、ENEOSに統合)。これもビンゴ。拓海を彷彿とさせる、のではなく、生きざまを含めて拓海そのもの、なのだ。

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>> 一見、セカンドステージ風だがオリジナルアレンジの計器類。メーターはすべてDefiで構成され、パネルはインパルスのドライカーボン製。



【3】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 7月号 vol.36
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

群馬県・榛名山が育むリアル「頭文字D」の世界(全3記事)

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【1】から続く

text:KIYOSHI HATAZAWA/畑澤清志 photo:SATOSHI KAMIMURA/神村 聖

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