【初代C30ローレルの軌跡 6】フェアレディZより早かった採用。スポーツカーなどに適したラック&ピニオン式ステアリング

1970年6月に登場したハードトップ。ボクシーなスタイリングで人気を博していたセダンから一転、伸びやかなルーフを持ち、開放的な視界が楽しめるハードトップは、ローレルの新たなオーナーカーとしての魅力を、見事に表現していた

       
ハイオーナーセダンを目指して日産自動車が開発、1968年3月に発表、翌4月に発売された初代ローレル。C30の型式名を持つこのセダンが2018年に発売50周年を迎え、その軌跡をノスタルジックヒーロー本誌で記録するために、日産ローレルC30クラブの野村充央さんに寄稿していただいた原稿を、55周年の今、Nosweb.jpでも7回に渡って連載する。

【 初代C30ローレルの軌跡 Vol.6】

【5】から続く


 C30ローレルのステアリングは、切れがよく、路面状態の伝達がされやすいと言われている、スポーツカーなどに適したラック&ピニオン式ステアリング式を採用している。

 今でこそ一般的なステアリング方式として、多くの車両に採用されているが、当時の日産車はカム&レバーなどが主流であった。同時開発されていた510ブルーバードは、先代411から採用されていたリサーキュレーティングボール式を踏襲している。当時の日本車は、どちらかというと米国車の影響を受けていたため、サスペンションは軟らかく、ステアリングもそれに同調し、軽くゆるやかな感触のリサーキュレーティングボール式を選択する傾向にあり、しばらくこの方式が全盛となった。この時点でC30ローレルはBMWなど欧州車のテイストを求め、従来の日本車とは一線を画す企画であったことがうかがえる。

 当時はいまだ発展途上にあった日本の自動車文化の中において、欧州車的な乗り味が受け入れられるほど成熟しておらず、革新的なメカニズムを採用しながら、ダイレクトな操作感覚を緩和し、当時の一般的な操作フィーリングに近づけることが求められるという皮肉な状況があり、せっかくの改革が生かされない中途半端な仕上がりとなった。結果として、次期モデルのC130では、米国車的な企画へと大幅な方向転換が図られ、ステアリングはリサーキュレーティングボール式が採用された。

 C30で開発されたラック&ピニオン式ステアリングは、1969年11月に発売となったフェアレディZで採用された。あたかもスポーツカーのS30用として開発された新機構のように印象付けられているが、実はハイオーナーカー、C30ローレルで先行採用されていたということを知っている方は、フェアレディZファンでも少ないだろう。

 一方、FF(前輪駆動)車用のステアリング方式としては、英国車ミニの技術を多く取り入れた日産初のFF車E10チェリーに、ラック&ピニオン式が採用。FF車用として定着した。

 一般のFR車用のステアリングとして再びラック&ピニオン式が採用されたのは、1979年11月に発売となった910ブルーバードからであり、ローレルへの再採用は、実にC30生産終了から12年あまりの時を経た1984年10月発売のC32からとなった。

>> 【画像28枚】リアのセミトレーリングアーム式サスペンションのディスプレイなど



独立懸架により、バネ下重量が軽くなり、柔らかいバネを採用できて乗り心地を向上させることができる。前後に軟、左右に硬の剛性配分が操縦安定性に寄与。タイヤ上下動に伴うトー角変化と、キャンバー角変化によるサイドフォースを相互に打ち消すジオメトリーが、常に直進性を保持する。



【7】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2018年6月号 vol.187
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

初代C30ローレルの軌跡(全7記事)


関連記事:ローレル



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text : MITSUOU NOMURA/野村充央 協力 : 全日本ダットサン会歴史研究部 資料提供 : 日産ローレルC30クラブ、野村充央

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