ランボルギーニ・カウンタック:新旧比較試乗でわかった、変わるものと変わらないもの。

ランボルギーニ・カウンタック:新旧比較試乗でわかった、変わるものと変わらないもの。

       

 改めて新旧2台のカウンタックを並べてみれば、確かにそのボディサイズは大きく異なり、似て非なる存在であることがわかる。ナロー911と最新の992を並べても同じことだろう。けれども面白いことにバックミラー越しに迫ってくる姿は新型もまたはっきりとカウンタックに見えた。ミッティア・ボルカート率いるデザインチームはカウンタックを現代に蘇らせるべく素晴らしい仕事をしたと思う。
 最新のカウンタックを駆ってみれば、アヴェンタドールの10年を締めくくるにふさわしい熟成されたドライブフィールに驚く。シアンに比べてもはっきりと違うテイストで、より洗練され、扱いやすい。毎日ドライブできるカウンタックという点は半世紀に及んだ進化の結果と言っていい。
 一方のカウンタックLP5000は、今みればそのボディサイズの小ささに驚くとともに、この中に新型よりも巨大なパワートレーンが詰まっているかと思うと、スタンツァーニの天才的なひらめきに改めて敬意を表したくなってくる。ほとんどパワートレーンの両脇に人が付属して走っているようなクルマ、なのだ。
 実を言うとオリジナル・カウンタックをドライブすることそのものは、さほど難しいものではない。外観から想像される以上にまともなドライビングポジションを取ることができる(決して寝そべったポジションではない)し、後方の見切りこそ怪しいものの、フロントノーズは短く、タイヤは足のすぐそばにあるので、車幅感覚さえ身につけばワインディングロードで思い切り走らせることに苦労はしない。
 ミウラに比べると随分とドライバビリティが高まった。これもまたスタンツァーニがランボルギーニのフラッグシップに求めた素養であったのだ。そしてLPレイアウトを採用した歴代フラッグシップモデルはより高性能を獲得しつつ、4WDや2ペダルトランスミッションの採用などで、誰もが比較的容易にドライブを楽しむことのできるモデルへと進化を続けた。その最終章が新型カウンタックであったと思えば、なるほど当初から4WD化を想定してこのレイアウトを考え出したスタンツァーニの理想に半世紀かけて辿り着いたと言うこともできるだろう。
 ランボルギーニの次期型フラッグシップモデルはもうすぐ姿を現すことだろう。次世代からはプラグイン・ハイブリッドモデルになることが決まっている。同時に12気筒エンジンを採用することも明言されてきた。あとは伝統のレイアウトを継続するのかどうか。
 もちろん彼らはさまざまな知恵を働かせ工夫を凝らして継続するに違いない。カウンタックの正しき血筋を、パオロ・スタンツァーニによる稀代のアイデアを、半世紀やそこらの歴史で絶やすことほどもったいない話はない。プレミアムブランドにおけるヘリテージの重要性とは血筋を守ることにある。継続こそブランドなり。新型カウンタックの高い完成度を知った今、アヴェンタドール後継モデルへの新たな期待もまた高まるばかりであった。



初出:MOTOR THINGS / モーターシングス ISSUE01 2022年12月発売
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

photo:小林邦寿、text:西川 淳

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