トムスとして思い入れの深い車両、期限を切らず内容優先の復元作業【2-4】KP47 DOHCスターレット復元作業 byトムス

2017年3月、富士スピードウェイで催された同サーキット生誕50周年記念イベントからのひとコマ。すっきりとした印象だが大型オーバーフェンダーが異様な印象を与える。

       
4バルブDOHCを積むKP47スターレットのトムスによる復元作業を追った2017年からのシリーズ第2弾。素性のよい車体に恵まれ、トムススターレットの復元作業は順調にその第1歩を踏み出した。下地処理も済み、塗装に出したボディはきれいな仕上がりを見せてトムスのワークショップに戻ってきた。パーツ調達に苦労しながらも、外装、エンジン、駆動系、サスペンションと復元作業は進み、日々スターレットの形は整っていった。

【2-4 期限を切らず内容優先の復元作業 KP47DOHCスターレット復元作業 byトムス】

Vol.3 から続く

 復元作業リポート第1回目となる前号では、ベース車両の状態とボディ復元に取り組む前の下地処理、ブラスト作業の模様をお届けした。サビ落としはサンドブラスト、この程度の知識しか持ち合わせなかった取材者にとって、ドライアイスブラストを目にしたときは驚きだった。簡単に言えば、車両と環境に優しい、ということで、旧車ファンのレストアにも効果的な方法だ。

 今回は、下地処理以降の作業について、その様子をお届けしていこう。

 ところで、この復元作業の取材を始める際に、トムス側に真っ先に尋ねた事があった。完成予定はいつ頃なのか? ということである。

「実は、3月(17年)に富士スピードウェイ創設50周年記念の最終イベントがあるのですが、そこで走らせられないか、と打診がありました。すべてのパーツが揃い、人員をそこに集中できるのなら不可能ではないですが、本業のスーパーフォーミュラ、スーパーGT、F3などが開幕を迎える直前ですから、とても無理です。富士イベントは、皆さんにお見せできる程度でご容赦願おうか、と考えています。むしろ、期限を切らずに、自分たちが見てもファンの方が見ても、十分に納得できるレベルで仕上げる作業を心がけたほうがよいと考えています」
 作業をプロデュースしたトムスデザイン大岩芳彦さんの当時のコメントだが、この言葉からも、トムスのKP47スターレットに対する深い思い入れが伝わってきた。

>>【画像22枚】フロント/リアの樹脂パーツ、ラジエーターなどで黒く塗装されたパーツを並べたカットなど。こうして見ると塗装がもたらすリフレッシュ効果は大きい


 しかし、それでも多少の影響を受けたことは間違いなかった。富士イベントに出展するため、形だけ取り繕う作業が発生したからだ。復元作業の効率を考えるならば、展示仕様車とする作業は明らかに不要である。

 結局、エンジンは電装系も燃料系もつながず、単に搭載しただけの状態。サスペンションもタイヤを取り付けるために組み戻し。作業の状態を定期的に取材していた目で見るならば、この時期によくこれだけのコンディションで見せることができたものだと、正直驚かされてしまった。

 それにしても「なかなか見つからない」とこぼしていたウインドーガラスを入手して間に合わせるあたりに、トムスという専門企業の強みを見る思いがした。同様に、リアスプリングも当時の仕様、1枚リーフを見つけ出してくるのだからさすがである。まさに蛇の道は蛇、というところだろうか。

 ところで、こうした復元作業の場合、いつもどこまでオリジナルに忠実な再現をすべきかが問題となるが、実動状態とするためには、どうしても当時の仕様では無理な場合が生じてくる。

 私見になるが、可能な限り当時の仕様に見せながら、要所は現代の技術やパーツで処理するのもやむなし、ではないだろうか。これが動態保存でなく静態保存とするなら、よりオリジナルに忠実な仕様も可能、と考えている。

 まだ、真っ白いボディのままだが、すでにカラーリング(仕様)の原案は固まっている段階だった。次号では完成状態から富士でのシェイクダウン、さらに走行本番となった2017トヨタ・ガズー・レーシング・フェスティバルでの晴れ姿をお見せしたい。ドライバーはもちろん舘信秀だ。



>> 基本が完成した状態。実は今回、このクルマのためにあまりにも有名なトムス「井桁」ホイールを製造。完成待ちの状態だ。エンジンは電装系、燃料系の取り付けも済み、いつでも始動できる状態。エンジンをかけ自走する日が楽しみだ。





>> 当時のシートではなくよく似たものを選択。実動のレースカー、安全性を考えればシートは現代のものを使用するのもやむを得ないと判断できる。





>> それほどの強度は持たないがアルミパネルによるリアバルクヘッドが設けられた。これだけでキャビン内の印象が変わるから不思議なものだ。






>> 基本が完成した状態。実は今回、このクルマのためにあまりにも有名なトムス「井桁」ホイールを製造。完成待ちの状態だ。エンジンは電装系、燃料系の取り付けも済み、いつでも始動できる状態。エンジンをかけ自走する日が楽しみだ。




初出:ノスタルジックヒーロー 2018年2月号 Vol.185
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

KP47DOHCスターレット復元作業 byトムス(全4記事)

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text & photo:AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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