「箱も消耗品と考えています」この510 の主人公はエンジン|1969年式 ダットサン ブルーバード SSS Vol.5

あこがれだったTCエンジンを愛車の510ブルに搭載。

       
あこがれのエンジンを楽しむために旧車乗りになった。そんな一風変わった510ブルーバードのオーナーが九州にいる。彼をとりこにしたエンジンはL型4気筒ベースとなるOS技研のTC16-C1。兄貴分の6気筒TC24-B1の後発でリバイバルが望まれるも、いまだ正式な発表のない幻のハイレブパワーユニット。現在、世界に1基だけの究極のL型4気筒を、彼はいかにして手に入れ、どう味わうのか。せん望のTC16-C1ライフを紹介する。

【1969年式 ダットサン ブルーバード SSS Vol.5】

【4】から続く

 なお、オーナーの510ブルは、あくまでもエンジンが主人公だ。吸排気やサスペンション、駆動系も、そしてボディも、すべてがエンジンのパフォーマンスを満喫すべくチューニングされている。もともとインジェクション仕様が計画されていた吸気システムは、当時仕様となるウエーバー48DCOに変更。エンジンルームでは、熱量の大きいエンジンをクールダウンするための冷却システムの強化にも注力されている。ミッションは直結5速のクロス仕様、デフはOS技研のスーパーロックを選択。ファイナルギアは3.9からスバルの4.444に変更。ローギア化による加速を楽しむ。サスペンションは、510ならではのセミトレを生かすハイレートなセッティング。

 一方、ボディやインテリアは、オリジナルを貫く方向。理由は、当時のクルマに当時にレーシングエンジンというコンセプトのマシンメイクのためだ。
「特にボディはせっかくの軽さを生かしたいんです。だから補強とかも一切やりません。確かにアクセルを踏み込むたびにボディがねじれる感覚はあります。ただ、それもまたこのエンジンの味わい。性能をより刺激的にするツール。箱も消耗品と考えています」。


>>【画像48枚】ほとんど手を付けず、当時のテイストをキープ。オリジナルを大切にするインテリアなど


OWNER

 あこがれだったTCエンジンを愛車の510ブルに搭載。30年越しの夢を実現させたオーナー。TC16-C1の刺激的なパフォーマンスを満喫するために、ボディはあえてポンコツのまま、という考え方がユニーク。「ボディは消耗品。5年も遊べたら十分ですよ」と笑う。エンジンの中身のこと以外は、チューニングも修理もほとんど自分でこなす知識と技術の持ち主。その肝の座ったL型の味わい方を、普通の人はまねをしないほうがいいかもしれない。





足回りはフロントがプライムガレージのワンオフ車高調でバネレートは10kg/mm。





リアはTRDのショートストロークショックに16kg/mmの強化スプリングを組み合わせる。リアのアルフィンドラムはS30Z用の加工品。将来的にはキャリパーも高性能化する予定だ。






オイル量を稼いだTC16専用のオイルパン。なお、TC16-C1の推奨オイル粘度は、15-50Wと硬め。柔らかすぎると高回転ユニットのため、腰下に負担がかかる。高温時でもオイルの強度があるタイプをがいいようだ。





デフは確実なトラクションを保証するOS技研のスーパーロックLSD。ケースはスバルインプレッサ用で、ファイナルは4.444のローギアをセットアップ。痛烈な加速を目一杯楽しむ。




1969年式 ダットサン ブルーバード SSS(P510)
SPECIFICATIONS 諸元
■ エクステリア:リスタード製FRPボンネット/カウルトップ/フロントフェンダー/トランク
■ エンジン:OS技研TC16-C1、ボアφ89mm×ストローク78mm(1940cc)、圧縮比13.5:1、OS技研鍛造ピストン、L14型用コンロッド(フルフロー加工、SQ処理)、L18型用フルカウンタークランク(オイル穴加工、ラッピング、AQ処理)カム320度(11.5mmリフト)、バルブスプリングセット荷重23kg(フルリフト荷重52kg)
■ 点火系:MSD、OS技研製デスビ(プロトタイプ)
■ 吸気系:ウエーバー48DCO S/P(アウターベンチュリーφ42mm、ニードル250、エアジェット220、メインジェット185、エマルジョンF4、ポンプジェット50)
■ 排気系:OS技研製φ48mmタコ足、長瀬発動機製φ60mmワンオフマフラー
■ 冷却系:リフレッシュ60製大容量ラジエーター(電動ファン)、亀有製16段オイルクーラー
■ 燃料系:燃料ライン引き直し(φ10mm)
■ 駆動系:OS技研Aタイプツインプレートクラッチ(フライホイール軽量加工)、直結5速クロス、インプレッサ用R180デフケース(ファイナル4.444)、OS技研スーパーロックLSD、亀有強化フランジ
■ 足回り:(F)全長調整式車高調(バネレート10kg/mm) (R)TRDショックアブソーバー(ショート)、強化スプリング(16kg/mm)
■ ブレーキ:(F)エンドレス製パッド (R)S30Z用アルフィンドラム(加工)
■ タイヤ:ポテンザRE71R 165/55R14
■ ホイール:ボルクレーシングTE37 14×7J ±0
■ 内装:Defi NSタコメーター/NS追加メーター(油圧、油温、水温)


【6】に続く


初出:ノスタルジックスピード 2018年2月号 vol.015(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 ダットサン ブルーバード SSS(全6記事)

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【1】【2】【3】【4】から続く

text : ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー)photo : RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックス ブックス)

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