一瞬の輝きを放ち、終えんを迎えたチェリーのレース活動 〜2016〜|1974年式 日産 チェリーX-1・R レーシング

日産ヘリテージコレクションにあるワークスカーの白/赤に対し、白/青としたボディカラー。写真などを参考にラインを決めた。

       
わずか2年間という短期間ではあったが、ファンに強い印象を残したチェリーのレース活動。
40年の時を超え、チェリーに魅せられた男がここに新たなマシンを造り上げた。

【1974年式 日産 チェリーX-1・R レーシング Vol.1】


 1971年10月10日、富士スピードウェイで行われた富士マスターズ250kmレースで、日産は1300cc以下のツーリングカークラスでトヨタカローラとしのぎを削っていたB110サニーに加え、E10チェリーのレースカーをデビューさせる。当時まだレースは後輪駆動車が主流の時代。そこへ日産が投入したチェリーは、ホンダ1300とともにFFレイアウトの挑戦的なレーシングカーであった。このレースはセダンボディがベースだったが、後にクーペX−1・Rがベースとなる。

 B110サニーよりも空力特性に優れたチェリーは、富士の長いストレートでライバルを突き放す。コーナーはFFのクセが強く、ドライバーはマシンと格闘しながらコースを攻めた。デビュー戦、黒澤元治選手、都平健二選手のドライブでワンツーフィニッシュを飾る。また、この頃大森ワークスに合流したばかりの星野一義選手は、果敢なドライブでチェリーのレーシングイメージを強固なものとした。

 しかし、1973年末の第1次オイルショックに起因する日産ワークスの活動縮小により、チェリーのレースカー開発は停止。以降のレースはプライベーター勢が熟成を続けてきたB110サニーが再び主力となる。チェリーのレース活動は、一瞬の輝きを放ち終えんを迎えたのだった。

>>【画像23枚】ロックが外部に取り付けられているハッチや、14インチのRSワタナベ製アルミホイールなど





フロントスポイラーは部品交換会で仲間が見つけてくれた当時ものの中古品で、長野チェリーと書かれていたという。ライトカバーは鉄板で自作している。



迫力のオーバーフェンダーは、当時チェリー用として市販されていたFRP製。フロント7.5J、リア7Jのホイールを収める。当時のワークスカーはフロント9J、リア8Jで、フェンダーの形状や張り出し量が異なる。


1974年式 日産 チェリーX-1・R レーシング
Specification 諸元
●エンジン:チェリーX-1・R用A12型改1298cc/東名自動車製当時ものφ76.85mmピストン/コンロッド研磨加工/レース用クランク/80度カム(コンロッド、クランク、カムは当時もの日産純正レース用)/ビッグバルブ(径不明)/東名自動車製バルブスプリング/ニスモ製メタル
●吸気系:FCR41キャブ4連装/竹口自動車オリジナルインマニ
●排気系:ワンオフステンレスタコ足/φ50mmマフラー
●駆動系:社外クロモリフライホイール/レースオプションクラッチ/LSD(以上当時もの)/チェリーバン用デフファイナル
●点火系:MSD7AL/サニトラ用純正フルトラデスビ 
●冷却系:ラジエーターアルミ3層ワンオフ製作/オイルクーラー当時レースオプションと同形状でワンオフ製作/レース用オプションオイルポンプ 
●足回り:(F)自作車高調(社外ショックアブソーバー、スイフトスプリング)/(R)当時ものレース用オプションショック、スプリング/レース用オプションリアスタビ取り付け予定(ステー製作中) 
●ブレーキ:(F)フィットRSキャリパー、同ローター/(R)ブレーキシュープロジェクトμで張り替え
●ホイール:RSワタナベ製アルミ(F)7.5J14Bタイプ (R)7.0J14Aタイプ
●タイヤ:ヨコハマアドバンA050 185/55R14(前後とも)
●エクステリア:リスタード製FRPボンネット、フロントフェンダー、リアゲート/フロントガラス以外アクリルに変更
●メーター:ウルトラ製タコメーター/トラスト製水温計/ニスモ製油温、油圧計
●その他:12点式ワンオフロールバー/ATL製30L安全タンク

【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 6月号 Vol.175(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 日産 チェリーX-1・R レーシング(全3記事)

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photo : NOBUTAKA KOREMOTO/是本信高

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