「英国に置いてある240Zを日本に戻して、元気になったらシルクロードを走りたい」|1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック Vol.2

キャブはソレックス50PHHを3個装着。ボックス形エアクリーナーケースは、当時のワークス仕様のまま。

       
「フェアレディZへの慕情」

昭和演歌の題名にも使われた慕情という言葉には、恋しい、懐かしいという意味がある。クルマは機械の集合体であるのだが、人それぞれの思いが込められる対象となることもよくある。

【1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック Vol.2】

【1】から続く

 その後、オーナーは英国に転勤となるが、すでにラリーのとりことなっており、憧れのダットサン240Zを入手。毎日の通勤や趣味で愛用していた。

 退職後に日本に帰国していたが、2001年秋に体調を崩して入院。岩下さんに「英国に置いてある240Zを日本に戻して、元気になったらシルクロードを走りたい」と夢物語を口にした。それを聞いた岩下さんが輸送準備に入り、2002年3月に英国から輸入。

【画像34枚】長期間の保管を考えて、ほとんどをSS材メッシュホースに変更。輸入時点でL26型に換装されたエンジンなど

 その後IRSに運び込み、レストアを開始した。しかし翌4月、完成した姿を見ることなく、オーナーは天国に旅立ってしまったのだ。

 遺志を受けた岩下さんは、自身の豊富な知識と経験を盛り込んで、70年代にサファリラリーに参戦していた仕様で、240Zを再生することを決意。ボディがそっくり入る大型のサンドブラスト設備を持った工場で、丸裸にしたZのボディを隅々まで磨いた。

 英国の倉庫に3年くらい置きっぱなしだったので、車両全体のサビがひどく、床面には穴が開き、地面が見えるほどだったという。また配線や電装系パーツも腐食でほとんど使えなかった。そこで電装パーツを車両原寸大のベニヤ板の上に置き、最小限必要な電装品だけを生かせるよう、配線を作り替えてある。



ボディ両側のサイドシルにあるフックは、泥道などでスタックした時に、この下にバンパージャッキをかまして持ち上げるためのもの。リアバンパー内側にも強化されたポイントがあり、同様に持ち上げることができる。





ホイールは神戸製鋼製・鍛造マグネシウム合金の6JJ×14インチを装着。現代の技術進化に合わせて、エンケイで防腐処理をおこなっている。ブレーキは前後ディスク+MK63の4ポットの組み合わせに変更。当時のラリータイヤを探したが入手できず、トレッド幅とタイヤ外径が最も近い、ブリヂストン製 DUELER A/T、27×8.50R14LTを前後に装着。





おなじみの形のラリーステッカーは、1971〜73年当時のオフィシャルもの。5の番号だけ手作りしている。ちなみに1972年サファリラリーでは、カーナンバー5のアルトーネン╱フォール組が、240Zで総合6位に入賞している。


1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック(HS30)
SPECIFICATIONS 諸元
全長 4300mm
全幅 1630mm
全高 1305mm
ホイールベース 2305mm
トレッド前/後 1355/1345mm
車両重量 1150kg
乗車定員 2名
最高速度 240km/h
エンジン型式 L26型改
エンジン種類 水冷直列6気筒SOHC
総排気量 2874cc
最高出力 250ps/7500rpm
最大トルク 26.5kgf・m/5400rpm
変速機 前進5段/後退1段、F5C71B・直結5速
燃料タンク容量 120L
サスペンション前後とも マクファーソン・ストラット
ブレーキ前後とも ベンチレーテッド・ディスク、MK63-20S
ホイール前後とも 鍛造マグネシウム合金製、6.0J×14インチ

●おことわり 取材車両のダットサン240Zサファリラリー仕様については、諸般の事情により、
関係者や企業へのお問い合わせには対応致しかねます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。

【3】【4】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 10月号 vol.171(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック(全4記事)

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photo : KAZUHISA MASUDA/益田和久

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