「アクセルあおりながらセル廻す(三秒間)」乗られていた頃そのままで保存|1938年式 ダットサン17型ロードスター【5】

1938年式 ダットサン17型ロードスター。ロードスターのボディ形状がよく分かる

戦前に登場した、日本最初の本格的量産車両であるダットサン。
セダンだけではなく、2座のロードスターのような趣味性の高いモデルも登場ていた。

【林コレクション 1938年式 ダットサン17型ロードスター vol.5】

【画像34枚】当時のカタログにはデッキシートとあるランブルシート。トランクを開けると大人2人が乗れるとあるが、子供ならなんとかというサイズ

戦争が終わったあと、ダットサンはほぼ同じ形で1948年から1950年まで生産をしているのだが、実用性の高いセダンやトラック、バンが主であり、クルマ好きにとっては魅力の薄いものとなってしまった。

また、戦前の工場設備が戦火を逃れるために疎開していたため、再生産初期のモデルは曲線の美しかったフロントフェンダーがプレス機がなために造れず、やむなくロールベンダーによる簡素なボディ造形となってしまった。
戦前の華やかな時代を知る自動車マニアが、戦前型ダットサンにこだわる理由なのかもしれない。

林さんが所有する1938年式 ダットサン 17型ロードスターの最初のオーナーは写真館の主であり、その後所有者は転々とするが、戦火を生き延びおそらくは昭和30年代まで走っていたものと思われる。

あえてレストアをすることなく、使われてきた当時のまま長らく保存をしている。
そこには時代に合わせて手を加えられた部分もあるが、それもまたこのクルマがたどった歴史を物語る。

このダットサン17型ロードスターの存在は、日本がまだ戦争へと向かう前の華やかだった昭和初期を伝える、貴重な生き証人なのである。

【1】【2】【3】【4】から続く


>>ドア内張りは状態がよいままで残っている。


>>戦火を生き残り、戦後も長らく走ったことを証明する車検ステッカーがフロントウインドーに残り、昭和30年代まで実動だったことがうかがえる。



>>「アクセルあおりながらセル廻す(三秒間)」あえてピカピカにレストアするのはやめ、乗られていた頃そのままの雰囲気で残すことが林コレクションの特徴。以前のオーナーが貼った始動のコツのメモが記載されている。
【画像34枚】画像をすべて見る

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年12月号 Vol.196
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1938年式 ダットサン17型ロードスター(全5記事

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text:Ryousuke Igarashi/五十嵐竜介  photo:Junichi Okumura/奥村純一 cooperation:Munehisa Mishige/三重宗久

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