当時ダットサンのロードスターを買うことは、フェラーリを手にするようなものだった|1938年式 ダットサン17型ロードスター【4】

日産自動車製であることを示すプレート。車台番号先頭の17なので、17型であることが分かる

日本最初の本格的量産車両であるダットサン。
林さんのコレクションから、1938年に登場した17型ロードスターを紹介する。

【林コレクション 1938年式 ダットサン17型ロードスター vol.4】

【画像34枚】水冷直列4気筒722㏄エンジンは本来6V電装だが、12Vのイグニッションコイルが追加されている。

戦前のこの時代、乗用車を買うというのは、庶民にとっては現代の感覚でプライベートジェット機を買うくらいのものかもしれない。

しかし中産階級であれば全く手の届かない存在ではなかった。
ダットサンのオーナーには医師が多かったというが、それらは往診に便利だからという理由だけではなく、新しい時代の乗り物である自動車に魅せられ、無理をしてでも手に入れたかったに違いない。

現代でも高級車に乗る医師は多いが、当時ダットサンセダンはレクサス、ロードスターはフェラーリを手にするようなものだったろう。
それが理由か、ダットサンは実用一辺倒のセダンだけでなく、4座のオープンであるフェートンやロードスター、クーペといった趣味性の高いボディのバリエーションが揃っていた。

戦争の足音が近づいてくる中、戦前に乗用車のダットサンが製造されていたのは1938年までであり、17型が最後となる。トラックはまだ生産が続けられていたが、それも戦争の激化とともに途絶えた。

【4】へ続く


>>水冷直列4気筒722㏄エンジンは本来6V電装だが、右上に12Vのイグニッションコイルが見える。


>>オイルバス式エアクリーナー。キャブレターは日立のサイドドラフト。

【画像34枚】画像をすべて見る

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年12月号 Vol.196
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1938年式 ダットサン17型ロードスター(全5記事

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text:Ryousuke Igarashi/五十嵐竜介  photo:Junichi Okumura/奥村純一 cooperation:Munehisa Mishige/三重宗久

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