スペアタイヤでいっぱいのフロントノーズ! エンジンはどこへ?|1967年式 マトラ・ジェット6【2】

フロントフード下はスペアタイアにスペースを奪われ、荷物はまったく置けないだろう


レース由来のテクノロジーである、ミッドシップレイアウトを市販車に初めて採用したのは、ランボルギーニでもロータスでもなく
今やその名を知る者も少なくなったフランスの小規模メーカー、「ルネ・ボネ」とその意思を継いだ「マトラ」であった。

【輸入車的懐古勇士 1967年式 マトラ・ジェット6 vol.2】

1962年にデビュー。翌年早々から生産が開始されたというルネ・ボネ・ジェットだが、それまでDBが得意としてきたル・マン24時間レースには、正式な生産モデルが用意される直前からエントリー。

翌63年には総合11位に加えて、当時の小排気量車コンストラクターが最も熱望していた「熱効率指数賞」も獲得するなど、ボネの目標は、少なくともモータースポーツにおいては達成されたことになる。

自ら理想とするミッドシップ・スポーツカー「ジェット」を創り上げたルネ・ボネの思いとは裏腹に、彼の興した会社は、創立からわずか2年にして急速に傾いてしまう。この窮状に援助の手を差しのべたのは、時の共和国政府とも近い関係にあった実業家マルセル・シャサニィ。

彼は自身のコングロマリットの中核企業、軍用ミサイルから宇宙事業も展開していた国策メーカー「アンシャン・マトラ」社の傘下にルネ・ボネ社を収めることで、自動車産業にも本格進出を図った。

結局64年10月をもって「マトラ・ボネ」とされた新ブランドでは、わずか197台が生産された時点で、ジェットも大規模なマイナーチェンジを受けることになる。「ジェットⅡ」とも呼ばれる改良版の開発に当たり、のちにマトラ社でルノー初代エスパスなども手がけることになる元シムカのスタイリスト、フィリップ・ゲドンを起用。

テールを延長して有効なトランクを設けたほか、ノーズやエンジンフードもモダナイズした上で、内装も豪華にするなどのフェイスリフトを受け、65年4月に再登場となった。

【画像15枚】テールはルネ・ボネ時代から大幅に延長され、よりスリークな印象を増している。テールランプは、ランチア・ストラトスにも流用されたことでも有名なフィアット850用と思われる



>>ホイール/タイアはルノー8と同じもの。センターキャップを外すと3本スタッドが見られるが、これはルノー・アルピーヌA110とも共通であった。


>>Cピラーのエアアウトレットは、ルネ・ボネ時代から大幅に大型化されるとともに、マトラのエンブレムを象ったパネルが装着される。


>>シート背後のエンジンには、高価なスモールGTとしてのキャラクターもアピールすべく、カーペット敷きのカバーが設けられる。




1967年式 マトラ・ジェット6

全長×全幅×全高(mm) 4220×1500×1200
ホイールベース(mm) 2400
トレッド前/後(mm) 1250/1260
車両重量(kg) 720
最低地上高(mm) 175
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量(cc) 1255
最高出力(ps/rpm) 105/6800
最大トルク(kg-m/rpm) 11.9/5000
圧縮比 10.5:1
トランスミッション 4MT
サスペンション 前後とも独立ダブルウイッシュボーン・コイル



【3】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2019年6月号 Vol.193
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1967年式 マトラ・ジェット6(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Masami Ssto/佐藤正已

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