かのゴルディーニ製エンジンを搭載した究極のジェット|1967年式 マトラ・ジェット6【3】

シート背後のエンジンには、高価なスモールGTとしてのキャラクターもアピールすべく、カーペット敷きのカバーが設けられる


レース由来のテクノロジーである、ミッドシップレイアウトを市販車に初めて採用したのは、ランボルギーニでもロータスでもなく
今やその名を知る者も少なくなったフランスの小規模メーカー、「ルネ・ボネ」とその意思を継いだ「マトラ」であった。

【輸入車的懐古勇士 1967年式 マトラ・ジェット6 vol.3】

パワーユニットはルネ・ボネ時代の956cc版が廃止とされる一方、残された1108ccエンジンは、標準の60psに加えて70psのハイチューン版が追加。加えて翌66年からは、R8ゴルディーニ用OHVクロスフロー1255cc・105ps(SAE)を搭載したシリーズ最上級・最高性能モデルも追加され、それぞれ「ジェット5/5S」、「ジェット6」と命名されるが、あまりの高価ゆえに販売は振わず、67年には生産を終えてしまったのだ。

ちなみに、今回の取材に協力いただいた北関東某地在住のエンスージアストの赤いジェットは「マトラ」時代の「ジェット6」。つまり1.3L版のゴルディーニ製エンジンを搭載した最強バージョンである。ジェットとしてはまさに究極の一台とも言えるだろう。

ルネ・ボネ/マトラ時代を問わず残存台数の極めて少ないモデルゆえに、もちろん運転するのは今回の取材が初めて。でも、ゴルディーニ製4気筒エンジンの弾けるような排気音に耳を傾けつつ、か細いタイヤで重量バランスの良さを味わうという感動的な体験から、ついついこのクルマの希少性を忘れてしまいがちとなる。

しかし、世界最初のミッドシップ車を体感しているという事実に思いを馳せると、走りそのものの素晴らしさが、いっそう増幅して感じられたのである。

【画像15枚】「マトラ」時代の「ジェット6」。1.3Lのゴルディーニ製エンジンを搭載した究極の1台。ルネ・ボネ時代はスパルタンな意匠だったダッシュパネルは、マトラでは豪華なウッド張りとされ、非常に高価だった価格にふさわしいものとなった



>>深めのバケット形状となるシートは、フランス車の美風を体現するかのようにソフトなクッションが施され、長距離走行でも極めて快適だ。


>>ジェット6ではウェーバー社製キャブレターが組み合わされて、105ps(SAE規格)をマーク。同時代のアルピーヌA110に匹敵する速さを見せる。


>>テールを延長したマトラ・ジェットではエンジン後部にラゲッジスペースが設けられるが、熱問題は免れないだろう。


OWNER



北関東某県在住のエンスージアスト。フランス車やイタリア車、特にRR車など個性の強いクラシックカーに強くひかれるとのこと。また、ご家族と2匹の愛犬と過ごす時間も大切にする、なんとも素敵な紳士である。



1967年式 マトラ・ジェット6

全長×全幅×全高(mm) 4220×1500×1200
ホイールベース(mm) 2400
トレッド前/後(mm) 1250/1260
車両重量(kg) 720
最低地上高(mm) 175
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量(cc) 1255
最高出力(ps/rpm) 105/6800
最大トルク(kg-m/rpm) 11.9/5000
圧縮比 10.5:1
トランスミッション 4MT
サスペンション 前後とも独立ダブルウイッシュボーン・コイル



【1】【2】から続く


初出:ノスタルジックヒーロー2019年6月号 Vol.193
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1967年式 マトラ・ジェット6(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Masami Ssto/佐藤正已

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