「ヤングタイマー」世代のクルマながら、乗り手を選ぶスーパースポーツ|2000年式 TVR キミーラ 400【3】ハチマルユーロ

クラシカルかつゴージャスなダッシュパネル。センターコンソールのハンドブレーキ直後には、アルミ削り出しのドア開閉ダイアルが見える

1990年代初頭に復活し、その後15年ほどの短い間にまばゆいほどの輝きを放ったTVR。鬼才ゴードン・マーレイの手で、まさに2度目の復活を遂げようとしている今、1990年代TVR最高のヒット作であるキミーラに触れてみることにしよう。

【ハチマルユーロー 2000年式 TVR キミーラ 400 vol.3】

 ユニークなドアスイッチを押してコックピットに収まってみると、その雰囲気やドライブフィールには、クラシックの味わいと風格が早々に伝わってくるだろう。

 さっそくローバーV型8気筒に火を入れてみると、意外なほどに長閑なサウンドやレスポンスが、ちょっとだけホッとさせてくれる。しかし、ギアを1速に入れて走り出すと、4Lという排気量を実感することになる。

 同年代に同じローバーV型8気筒を搭載したスーパースポーツのグリフィス。あるいは後にTVRが自社開発したV型8気筒SOHCエンジンを搭載した「サーブラウ」、「タスカン」ほどのハイチューンではないが、豊かな低・中速トルクと絶対的な軽さがもたらすパフォーマンスは、まさしくスーパースポーツ級のもの。現代車とは違って電子制御トラクションコントロールなどの備えもないことから、体感的にはかなりのじゃじゃ馬なのだ。

 また、4輪ダブルウイッシュボーンに、 ビルシュタイン製ダンパーとアイバッハ製スプリングを組み合わせたというサスペンションは、グリフィスに比べればソフトと評されていたはずだが、それでもアスファルトの荒れた路面では、クルマ全体が揺すられるようなハーシュネスを受ける。

 また、クイックなステアリングゆえに路面の影響を受けやすいうえに、トラクションが抜けてしまいそうな状況ではスロットル操作にも細心の注意を必要とする。

 比較的新しい世代に作られた「ヤングタイマー」としては珍しい、乗り手を選ぶスーパースポーツなのだが、それがかえって好ましく感じられるのは、現代のスポーツカーへのアンチ・テーゼなのかもしれない。

【画像18枚】「ヤングタイマー」としては珍しい乗り手を選ぶスーパースポーツは、現代のスポーツカーへのアンチ・テーゼなのかもしれない。


>>3950ccから235psを発生するローバー製のV型8気筒OHVユニット。パワーや吹け上がりは穏やかだが、4Lの排気量を生かしてトルクフル。


>>本革レザー張りのシートはコンベンショナルな形状ながら、掛け心地・ホールド性ともに良好。


>>パワーウィンドーの開閉スイッチは、レザー張りのダッシュパネルとセンターコンソールの狭間、のぞき込まないと見えない位置に隠されるように設置。ドア開閉ダイアルと同じく、当時のTVRのギミック好きが感じられよう。




2000年式 TRV キミーラ 400

●年式 2000年式
●全長×全幅×全高(mm) 4080×1720×1220
●ホイールベース(mm) 2282
●トレッド(mm) 1460/1460(前/後)
●車両重量(kg) 1060
●エンジン種類 水冷V型8気筒OHV
●総排気量(㏄) 3950
●内径×行程(mm) 94.0×71.0
●最高出力(ps/rpm) 235/5500
●最大トルク(kg-m/rpm) 36.1/4500
●サスペンション 前ダブルウィッシュボーン
後ダブルウィッシュボーン
●ブレーキ 前後ともベンチレーテッドディスク
●タイヤサイズ 前205/55ZR15/後225/50ZR16


【1】【2】から続く


初出:ハチマルヒーロー 2016年11月号 Vol.38
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

2000年式 TVR キミーラ 400(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田 公実 photo: Masami Sato/佐藤 正巳

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