乗り続けて45年、レストア歴もなく4万5000kmという低走行。博物館クラスのケンメリRとこの先も｜ワンオーナーズヒストリー｜1973年式 日産 スカイラインHT 2000GT-R【3】

【2】から続く
クルマは、手に入れることよりも、大切に乗り続けることのほうがずっと難しい。人の気持ちは移りがちで冷めやすく、そしてクルマは使わずとも年々確実に老いていくからだ。今回紹介する愛車に一途なオーナーは、希少なケンメリGT-Rを新車で手に入れて以来、45年にわたって所有し続ける。何人もの人から「譲ってほしい」という声にも手放なさなかった、そのほれ込みようは並ではない。

【ワンオーナーズヒストリー　1973年式 日産 スカイラインHT 2000GT-R vol.3】

このケンメリGT-Rを手に入れて45年、車体にレストア歴はなく、4万5000kmという低走行で、これまで、エンジンを開けたこともない完全なオリジナル車両。幼少期に、軽自動車のエンジンを自らの手で組み上げたほどメカ好きなオーナーが、「繊細で心配になる音」と形容するS20型エンジンが奏でるサウンドも、このケンメリRは当時とまったく変わらない。



>> 新車時のままだというエンジンルームに収まるS20型エンジン。メンテナンスと各部の調整を行っているだけらしいが、アイドリングは驚くほど静かで、800rpm付近のまま安定していた。

「暖機しないと、グズってまともに走らないところも、晴れた日より曇った湿気の多い日の方がパワーが出るところも、何ひとつ変わらず、このGT-Rは昔のまま。新車で買って、ずっと付き合ってる持ち主がいうんやから、間違いありません」と、純正オリジナルのGT‐Rならではの特性を語る。

販売台数197台といわれる希少車でマニアの人気の的。発売当初からGT‐R好き、走り好きのオーナーに所有されることが多かったモデルだけに、走行距離が伸びがちで、必然的に修理される部分も増える。だからこそ、このワンオーナーでフルオリジナルをキープしているケンメリRの価値は高い。ボディのコンディションはもちろん、内装も欠品なし、エンジンも当時のままながら快調そのもの。紛れもなく博物館クラスのケンメリGT‐Rだ。

このコンディションなだけに「譲ってほしい」との声は多く、最近も知人から声をかけられた。もう年だし手放そうかとも考えたが、その途端なんだが気力がわかなくなってしまった。

「このGT‐Rは自分の生きがいであり唯一の誇り。だから、もう一生涯、手放すことはないと思います」

【画像27枚】ワンオーナーで低走行。ケンメリの生産台数を考えても、間違いなく博物館クラスといえる一台だろう



>>ハコスカGT-R、Z432ではリンケージ式だったアクセレーターは、ケンメリGT-Rではワイヤー式が採用された。そのため、スロットルオグジャリーシャフトには、扇型のワイヤーレバーが備わる。エアクリーナーボックスにもワイヤーを留めるアダプターが付く


>>エキゾーストシステムも純正で、ステンレス製のタコ足はZ432と同形状を採用する


>>「車体の塗色」が記載された1977年以前の車検証。オリジナルカラーかどうかを判明できる、唯一の資料としても貴重なものだ




OWNER’S COLLECTION/貴重なパーツや資料がどっさり

若かりし頃、ハコスカ3台とケンメリ2台の計5台のGT-Rを所有していたオーナー。クルマは1台になったが、当時ストックしていたパーツや資料は、今も大切に保存している。S20型エンジンのヘッドカバー、ミラーやホイール、リアスポイラーなどのスタンダード部品から、オイルクーラー、デフクーラー、リアスタビなどのレース用部品など盛りだくさん。




1973年式 日産 スカイラインHT 2000GT-R

全長4460mm
全幅1695mm
全高1380mm
ホイールベース2610mm
トレッド前/後1395/1375mm
最低地上高165mm
室内長1790mm
室内幅1340mm
室内高1125mm
車両重量1145kg
乗車定員5名
最高速度200km/h
登坂能力tanθ0.46
最小回転半径5.2m
エンジン型式S20型
エンジン種類水冷直列6気筒DOHC
総排気量1989cc
ボア×ストローク82.0×62.8mm
圧縮比9.5:1
最高出力160ps/7000rpm
最大トルク18.0kg-m/5600rpm
変速比1速2.906/2速1.902/3速1.308/4速1.000/5速0.864/後退3.382
最終減速比4.444
燃料タンク容量55L
ステアリング形式リサーキュレーティングボール
サスペンション前/後ストラット式独立懸架/セミトレーリングアーム式独立懸架
ブレーキ前後ともディスク
タイヤ前後とも175HR14
発売当時価格163万円



【1】【2】から続く


初出：ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
（記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです）

1973年式 日産 スカイラインHT 2000GT-R（全3記事）

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