「CB400F」「フュージョン」そして「F1」往年のホンダのレジェンドエンジニアたちが愛したクルマ|1957年式 トライアンフ TR3【3】

スタンダード・バンガード用をチューンナップした1991㏄95 psの水冷4気筒OH Vエンジン。トルクフルで非常に扱いやすい。

       
【2】から続く

1953年に正式発売されたTR2は一定の人気を得るのだが、クーリング不足が指摘されたラジエーターグリル(日本では「おちょぼ口」と愛称される)をはじめ、パワーアップなども求める市場のリクエストにこたえるかたちで、2年後の55年、マイナーチェンジを施した後継車「TR3」がデビューすることになる。

【輸入車版懐古的勇士 1957年式 トライアンフ TR3 vol.3】

今回ご紹介する1957年式トライアンフTR3は、かつて本田技研にデザイナーとして在籍し、今やバイクファンの間では伝説と化している「CB400F」や「CBX400F」、スクーターの人気を復活させた「タクト」、さらには今のビッグスクーターの元祖ともいえる「フュージョン」などをデザインされた故・佐藤允弥さんが、晩年に愛用していた個体である。しかも、佐藤さんの前のオーナーは、第1期ホンダF1をエンジン開発者として主導したのち、80〜90年代の第2期には社長として支えた川本信彦さんだったという。つまり、往年のホンダのレジェンド的エンジニアたちに愛用されたTR3なのだ。

現所有者の才門さんは、佐藤さんが3年前に逝去されたのち、ご遺族および佐藤さんがTR3とともに過ごした長野県某所のクルマ仲間たちからも引き受けを要請されたが、この歴史を受け継ぐことを相当に迷ったのち、ようやく昨年末に入手したという。

ところで、一台のクルマ限定で掘り下げるのが通例のこのコーナーにて、もう1台の古い英国車が写っていることに疑念を感じる、目ざとい読者諸賢もいらっしゃるだろうが、2台をともに撮影したことには理由がある。実はこのモーリス1100もまた、かつて川本信彦さんが愛用された歴史のある一台なのだ。もちろん、こちらのモーリスについても、近いうちに当コーナーにて取り上げる予定となっているので、お楽しみに。

【画像17枚】「サイドスクリーンTR」の愛称の由来となった、上部をカットアウトしたドアと、差し込み式のサイドスクリーンなど


>>スパルタンながら豪華なダッシュボード。大径のステアリングホイールはキックバックを吸収するため、細いワイアで組まれたスポークを持つ。


>>前オーナーの佐藤さんの意向で、変速機は現代のフォード社製、ケータハムなどにも使用される5速MTに換装されている。


>>このクルマを日常のアシとしていた佐藤さんは、デイリーユーズでの実用性を考え、ウインカーやヘッドライトのレバーも近代的なものに換装。

OWNER

PR会社に勤務し、さる超高級車ブランドの広報活動を担当する傍ら、プライベートではメルセデス500Eやフィアット900E(自称イタリア製サンバー)などを所有するクルマ好き。無類の好人物で、業界での信頼も厚い。



1957年式 トライアンフ TR3


全長×全幅×全高3835×1410×1270mm
ホイールベース 2235mm
トレッド前/後 1143/1156mm
車両重量 975kg
ボア&ストローク 83.0×92.0mm
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量1991cc
最高出力 95/4800ps/rpm
最大トルク 16.3/3000㎏-m/rpm
最高速 164km/h
トランスミッション 4速MT
サスペンション 前 ダブルウイッシュボーンコイル
後 半楕円リーフ
タイヤ 5.50x15


【1】【2】から続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年2月号 vol.192
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1957年式 トライアンフ TR3(全3記事

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Jun-ichi Okumura/奥村純一

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