約1.1tのボディのハコスカに300㎰弱の高精度エンジン【4】1971年式 日産 スカイライン HT 2000 GT

豊富なノウハウが、惜しげもなく注ぎ込まれた匠のボディ

       
オリジナルを尊重しつつ現代流のエッセンスを加えることで、快適で速い旧車作りを実践してきたスターロード。その王道メニューを施したのが、GT-R仕様のハコスカだ。3L化されたL型ユニットをはじめ、ボディから足まわりに至るまで、豊富なノウハウを惜しみなく注ぎ込んだ。作り手の情熱とオーナーの愛情が詰まった、そのマシンの詳細をじっくりとご覧いただこう。

【1971年式 日産 スカイライン HT 2000 GT Vol.4】

【3】から続く

 腰下の精度にもこだわった。ダミークランク&ヘッドボーリングを実施して真円度を高めたブロックに、オリジナルのφ89mm鍛造ピストンやI断面コンロッド、L28型用クランクシャフトを組み込む。これらは徹底した重量合わせやバランス取りを行うことで、振動やロスを最小限に。まさに気が遠くなるような地道な作業を重ねることで、速さと扱いやすさ、気持ちよさを兼ね備えた好バランスなL型チューンドへと昇華させている。

「バイクの感覚と似ていますね。今どきのクルマとは違い一筋縄ではいかない所もありますが、徐々に乗り慣れていく。そこも面白いです。パワーも十分で持て余すくらい。完璧にセッティングを出してもらっているので、エンジンがぐずつくこともありません」とオーナー。

 それもそのはず、約1.1tのボディに300㎰弱の高精度エンジンが積み込まれるのだから、その軽快な走りは想像するにたやすい。当然ながら、引き上げられたパワーを受け止めるべく駆動系にもきっちり手が入る。

 ミッションはFS5W71Cクロスに積み替え、デフもR200へと変更。ドライブシャフトもB90D90タイプを流用するなど、十分な容量を確保することで、耐久性を引き上げている。


>> 【画像22枚】R200でファイナルは4.1となるデフなど。ニスモの機械式LSDも組み込む。またドライブシャフトはB90D90タイプのOH品を流用したほか、4穴フランジも圧入溶接した専用品を採用する




>> ミッションはFS5W71Cをクロス化。クラッチはORC製シングルを組み込み、扱いにくさは一切なし。





>> 新たに装着したスターロードの新作ブレーキキット。鍛造4ポットキャリパーとφ286mmの2ピースローターの組み合わせは、初期制動はソフトで、踏み込むほどに制動力がアップ。40段の減衰力調整機能を備えたオリジナルの車高調は、ステージを選ばずしなやかで軽快な走りを実現。サーキット走行でもこの組み合わせによる性能の高さは実証済み。


OWNER

「どうせならきっちりと仕上げた旧車を買おうと、以前から思っていました。お店を訪れた際に井上代表にレストアの話を聞いて、そこまで細かい所までやっているのかと。さらに現車をみたら誌面で見るよりキレイに仕上がっていて……。迷うことなくオーダーしました。完成して5年ほどたちますが、絶好調でトラブルや故障も皆無です。夏場の渋滞でも水温は85℃までしか上がらないので不安なく走れます。大満足ですね」


1971年式 日産 スカイライン HT 2000 GT(KGC10)

SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:ボディフルレストア(総剥離)
■エンジン:L28型改3.0L仕様、【ヘッド】燃焼室加工(含容積合わせ)、カッター跡修正・形状修正、ヘアライン仕上げ、ポート拡大加工(オリジナル形状)、IN:ヘアライン仕上げ EX:半鏡面仕上げ、上面修正/下面面研、77.5度カムシャフト(リフト9.3mm)、ビッグバルブ(IN:φ45mm EX:φ36.5mm/118mm)、ABB/PBBバルブガイド、SPL形状シートカット(カムシャフトセンター基準にて)、ハイリフト対応ハイレートバルブスプリング、オフセットリテーナー(特殊鋼)、強化バルブコッター(タフトライド処理)、クロモリロッカーガイド 【ブロック】φ89mm鍛造ピストン(PH29mm、ピストン重量バランス0.5g以内)、I型断面コンロッド(L=140mm、コンロッド重量バランス0.5g以内)、 L28型用クランク1本キー加工/曲がり修正/ダイナミックバランス/ジャーナル&ピンラッピング、ブロック上下修正面研、ダミークランク&ダミーヘッドボーリング、ARP強化クランクキャップボルト、シリンダーパルホスM処理、ニスモ製レース用メタル、強化オイルポンプ、強化クランクプーリーボルト、水穴ブランク栓入れ替え
■吸排気系:ソレックス44PHH、スターロード製オリジナル燃料配管/オリジナルφ48mm等長ステンレスタコ足/オールステンレスローダウンマフラー
■電気系:スターロード製ブラックオルタネーター
■冷却系:スターロード大容量3層オールアルミラジエーター
■駆動系:ORC製シングルクラッチキット、FS5W71Cクロスミッション、ニスモ製セミクイックシフト、R200フルOHニスモLSD(ファイナル4.1)、B90D90タイプドライブシャフトOH品流用+専用4Hフランジ製作(圧入溶接加工品)
■サスペンション:スターロード製(F)車高調30段 (R)フルタップ30段調整ショートショック/フジーアジャストメントアーム
■ブレーキ:スターロード製(F)4ポット鍛造キャリパーキット (R)スターロード製ディスクブレーキコンバートキット/マスターバックキット
■タイヤ:ブリヂストン ポテンザ(F)RE71R 195/55R15 (R)RE01 225/50R15
■ホイール:グロースター ブラックカットディスク ブロンズアルマイトリム(F)15×9J +10(Oディスク)
(R)15×10J -28(Oディスク)
■インテリア:MOMO製JETステアリング、レカロ製クロススポーツスター×2脚、スターロード製クーラーキット


【5】に続く

初出:ノスタルジックスピード vol.022 2019年11月号
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年式 日産 スカイライン HT 2000 GT(全5記事)

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【1】【2】【3】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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