「ジージのクルマに乗る」エンジンを好調に保つ秘けつは「早めの点検と予防措置|1972年式 日産 スカイライン 2000 GT Vol.3

とても45年ものとは思えないコンディションを保つオーナーのハコスカ。JAFのエンブレムも40年以上引き継ぐ自慢の印だ。右側に装着したフォグは雪道用だ。

       
1957年から1974年までの間、ヤナセではプリンス車の販売を行っていた。そのヤナセでハコスカを新車で購入し、今なお乗り続けているオーナーだ。ほぼ半世紀に近い時間をかけて紡いできた、愛車ハコスカとの物語を紹介しよう。

【1972年式 日産 スカイライン 2000 GT Vol.3 ワンオーナーズヒストリー】

【2】から続く

 普段は東京都文京区の「吉田モーター」、埼玉県寄居町の「リバイブジャロピー」に整備を託しているが、さすがに45年ものとなると消耗品の交換や整備に出費はつきもの。半年ごとの点検、週に2〜3回は必ず乗ることを徹底し、愛車のコンディションを保っている。

「2人の息子も、もう40代ですっかり独立していますから、私にとってはハコスカが三男坊みたいなものです。いうことを一番聞く、かわいいやつですよ。だから少々お金がかかっても仕方ないでしょう(笑)。最近は孫がハコスカに興味津々で、『ジージのクルマに乗る』といって喜んで乗ってくれるのが楽しみです。マニュアルシフトが珍しいみたいで、運転していると不思議がってよく手を置いてきますね」

 三世代に愛されたヤナセもののハコスカ。オーナーの夢をうかがった。

「ボディが腐らない限りは、ずっとハコスカに乗り続けていきたいです。そのためには自分も健康でいないと。夢は日本一周ですから(笑)」


>>【画像22枚】日産の「N」とグレードの「2000GT」のエンブレムが装備されるフロントグリルなど。フロントフェンダーの「Skyline」の書体はブロック体となる



>> エンジンの好調を保つ秘けつは、「早めの点検と予防措置」。デスビ、セルモーター、ラジエーター、ドライブシャフトと、これまで消耗部品を交換してきたが、エンジン本体のオーバーホールは行ったことがないという。






>> 銀座にあったヤナセのショールームに立ち寄った際に、エンジンルームのIDでヤナセものであることを確認した店長さんが、リアウインドーの古くなったステッカーを新しいものに貼り替えてくれたそうだ。ヤナセでは、そういうサービスも行っている。





>> 当時の貴重な整備記録簿。写真は新車1000km時点検のもの。型式、シャシー番号、エンジン番号を記載した記録。整備内容のメモの横には、「株式会社ヤナセ東京支店プリンス部サービス課」の社判が。これらの記録もきちんと保管している。




OWNER’S VOICE/「ヤナセはプリンスの育ての親」


 2015年にヤナセが創立100周年を迎えた時に、お客様相談室へお祝いの電話を入れたオーナー。それが縁となって、ヤナセが発行する広報誌にも取り上げられた。戦後に発展をとげた日本の自動車産業にあって、当時はまだ新参者だったプリンスを販売したヤナセを、オーナーは「プリンスの育ての親」と表現する。クルマを造る側も売る側も試行錯誤だった時代、お互いに吸収しあうものがたくさんあったということだろう。そんな時代を、ハコスカとともに過ごした生き証人ともいえるオーナーのお話は、とても貴重だ。



ゴルフもたしなむ多趣味なオーナー。トランクには愛用のゴルフバッグが収納されていて、「明日はゴルフです」と語っていた。


1972年式 日産 スカイライン 2000 GT(GC10)


Specification 諸元
全長 4400mm
全幅 1595mm
全高 1390mm
ホイールベース 2640mm
トレッド前/後 1325 / 1320mm
最低地上高 170mm
室内長 1755mm
室内幅 1300mm
室内高 1110mm
車両重量 1095kg
乗車定員 5名
最高速度 170km / h
登坂能力 tanθ0.56
最小回転半径 5.3m
エンジン型式 L20型
エンジン種類 水冷直列6気筒SOHC
総排気量 1998cc
ボア×ストローク 78.0×69.7mm
圧縮比 8.6:1
最高出力 115ps / 5600rpm
最大トルク 16.5kg-m / 3600rpm
変速比 1速 3.592 / 2速 2.246 / 3速 1.415 / 4速 1.000 / 後退 3.657
最終減速比 3.90
燃料タンク容量 50L
ステアリング形式 リサーキュレーティングボール式
サスペンション前/後 ストラット式独立懸架 / セミトレーリングアーム式独立懸架
ブレーキ前/後 ディスク / リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 6.45S14-4PR
発売当時価格 86.6万円


初出:ノスタルジックヒーロー 2018年2月号 Vol.185
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 スカイライン 2000 GT(全3記事)

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【1】【2】から続く

text : HIDEO KOBAYASHI/小林秀雄 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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