飛鳥ミノル【3】4L V12エンジンを、コンパクトなパッケージングでリアミッドに収める|ランボルギーニ ミウラ P400S|サーキットの狼世代へ

トリノを代表するカロッツェリア、ベルトーネのデザイン

       
誰しもが通ったであろう「サーキットの狼」という漫画。この作品が登場するまで実在するクルマを描き切った作品がなかったことに加え、漫画に登場するスーパーカー群を乗り継いできた作者によるリアルなエピソード。そして、1人の暴走族がF1レーサーへと成長する過程を丁寧に描いたストーリーに酔いしれた。そんなサーキットの狼世代に向け、往年の名車とともにじっくりと堪能できるシリーズをおおくりする。

背反する力強さと優雅さを融合
飛鳥ミノルに合ったクールな性能

【 ランボルギーニ ミウラ P400S  Vol.2】

【2】から続く

 それにしても、一介の農耕機メーカーだったランボルギーニが、事もあろうにフェラーリに挑み、しかもわずかの期間でそれに比肩し得るモデルを造り上げてしまった背景には、やはりそれなりの条件が揃っていた。

 まず、開発陣にジャン・パオロ・ダラーラ、パオロ・スタンツァーニ、ボブ・ウォレスという優秀なスタッフを抱えていたことが挙げられる。とくにダラーラは、その後レーシング・コンストラクターとして大成したことはあまりに有名な話で、まだ無名時代の未完の大器が、同社の車両クオリティーに大きく影響した事実は見逃せない。

 ミウラが4LV12という大排気量かつ巨大なエンジンを搭載したにもかかわらず、それに見合わぬコンパクトなパッケージングで仕上がった要因には、無駄を徹底して排除する思考、言い換えればレーシングカー造りに通ずる合理思想の存在が挙げられる。

 具体的には、パワートレーン系が前後に長く延びることを嫌い、エンジンとミッションを横置きにして搭載する手法だ。やはりフロントにパワートレーン系が集中するFF方式をコンパクト化するため、アレック・イシゴニスが名車「ミニ」で採用した手法を、大排気量ミッドシップスポーツのミウラに応用した発想だ。


>>【画像20枚】鋼板と角材を溶接で組み上げるシャシー構造を採用したフロントセクションなど。サスペンションはA字アームを使う典型的なダブルウイッシュボーン方式。前モデル400GTの車重1500kg級から大幅な軽量化が図られ1000kg級の車重を実現。これに350ps級のエンジンを組み合わせたわけだから、その速さは推して知るべしの状態だった



>> 長大な4LV12エンジンをミッションとともに横置きにしてミッドマウント。ロードカーの領域ではマトラ・ジェット、デ・トマソ・ヴァレルンガ、ロータス・ヨーロッパなどに次ぐ市販ミッドシップカーとなるが、100ps級のマトラ、デ・トマソ、ロータスに対しミウラは350ps級のスーパースポーツと、その意味はまったく違っていた。


ランボルギーニ ミウラ P400S


SPECIFICATION 諸元
全長×車幅×全高●4380×1780×1100mm
ホイールベース●2504mm
トレッド 前/後●1512mm/1512mm
車両重量●1180kg
エンジン●60度V型12気筒DOHC 横置きミッドシップ 
総排気量●3929cc
最高出力●370ps/7700rpm
最大トルク●39.0kg-m/5500rpm
生産年●1968~1971年
生産台数●765台
生産国●イタリア
※スペックは池沢早人師ミュージアムに準じる。

【4】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年12月号 Vol.184
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ランボルギーニ ミウラ P400S (全3記事)

関連記事:サーキットの狼世代へ

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【1】【2】から続く

©︎池沢早人師/animedia.com text : AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo : RYOTA SATO/佐藤亮太(サッカス)

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