幻のクロスフロー【2】高額だったため購入者はいないとウワサされていたLY型|1974年式 日産 フェアレディZ

ステアリングには、ダッツンコンペステアリングを選ぶ。コラムの上にあるのはデジタル電圧計。センターコンソールの奥側にオートゲージの水温計、PLXの空燃比計をレイアウトする

       

幻のクロスフロー

【1974年式 日産 フェアレディZ Vol.2】

【1】から続く

 こうして生まれたLYヘッド+L24型ブロック搭載のフェアレディZは、1973年4月からレースに参戦。翌1974年1月、排気量を2.8Lに拡大したLY28型エンジンのフェアレディZが富士スピードウェイでテスト走行を行ったと伝えられているが、折しも巻き起こったオイルショックの波にのまれ、日産はレース用エンジンの開発を断念。プライベーターにLY型エンジンを貸与する形でデータ収集に努める道を選ぶことになった。

 そして1978年、日産はLY型クロスフローヘッドやマニホールドをスポーツキットとして市販化する。この時点でのLY型は、外付けウオータージャケットの採用、専用のピストンやコンロッド、クランクシャフト、カムといった中身も含め、大幅な進化を遂げていた。

 しかし、あまりにも市販価格が高額だったために、買った者など誰もいないとうわさされていた。レース用に貸与されていたエンジンはすべて日産への返却後につぶされ、市販化したパーツを買った者はいない。つまり、LY型エンジンは歴史から消え去ってしまったと思われた。ところが、ここで紹介するオーナーは、日産スポーツコーナーで市販のLY型パーツを購入した貴重な生き証人の1人だ。


>>【画像20枚】ダイレクトイグニッション化されているが、取り付け位置が狭いためコードで延長し、助手席側タイヤハウス上部にコイルを配置しているレイアウトなど




>> 日産がLY型のために製造したインマニに、φ52mmのジェンビー製スポーツインジェクションを組み合わせている。





>> 交換された240Z用ヨコ型グリルとコアサポートの間のわずかな隙間に、トラスト製オイルクーラーを設置する。





>> ハイパワー化したLY型エンジンの冷却は、汎用のアルミ3層ラジエーターと2個の電動ファンで行う。ウオーターポンププーリーは当時のレース用パーツだ。

【3】に続く

1974年式 日産 フェアレディZ(S30)


SPECIFICATION 諸元
エクステリア:フェラーリレッドオールペイント、メッキ部分&汎用フロントスポイラーガンメタペイント、240Z用グリル、ヨーロッパ用クリアウインカーレンズ
エンジン:LY28型、ボアφ87.8mm×ストローク79mm(2870cc、圧縮比11.7)、LY型専用マグネシウムヘッドカバー / ヘッド / ピストン / コンロッド / カム / クランク / インテークマニホールド / エキゾーストマニホールド、L28型用N42ブロック、LY型用ドライサンプオイルパン加工、ICレギュレーター内蔵オルタネーター、レース用ウオーターポンププーリー、バランサー付きクランクプーリー
点火系:RB25型用ダイレクトイグニッション&クランク角センサー
吸排気系:JENVEY製スロットルボディ、RB25DET型用インジェクター(370cc)、柿本マフラー、ワンオフチタンテールエンド
制御系:HKS製F-CON V Pro
冷却系:アルミ3層ラジエーター、電動ファン×2、トラスト製オイルクーラー
駆動系:240ZGクロスミッション、クロスフロー4気筒用ベルハウジング、R200デフ、クスコ製LSD
サスペンション:日産レーシングオプションコイル、ショックアブソーバー、スタビライザー
ブレーキ:(F)MK63キャリパー、日産レーシングオプションローター、(R)DR30用ディスク
インテリア:ダッツンコンペステアリング、大森メーター製水温計 / 油温計 / 油圧計、オートゲージ製水温計、PLX製空燃比計、ニスモ製シフトレバー、ブリッド製シート合皮張り替え、ウィランズハーネス、4点式ロールバー
タイヤ:ヨコハマSドライブ 205 / 55R15
ホイール:RSワタナベ8スポークAタイプ 15×7.5J


初出:ノスタルジックヒーロー 2017年8月号 Vol.182
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 日産 フェアレディZ(全3記事)

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【1】から続く

text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : RYOTA SATO/佐藤亮太

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