「クラシック・フェラーリを自らの手で操る」|1979年式 フェラーリ 308GTB【3】スーパーカーの古典を体現したエキサイティングな走り

フェラーリV8ベルリネッタの開祖となった、美しき名作

       

フェラーリV8ベルリネッタの開祖となった、美しき名作

日本の子供たちの間で「スーパーカーブーム」が吹き荒れる直前、1975年にデビューしたフェラーリ308GTBは、フェラーリの傑作、ディーノ246GTの正統な後継車にして現代まで継承されるフェラーリV8ベルリネッタの起源となった。

【輸入車版懐古的勇士 1979年式 フェラーリ 308GTB Vol.3】

【2】から続く

 今回、取材・撮影したフェラーリ308GTBは、スチール製ボディにキャブレター付きⅤ型8気筒エンジンを組み合わせた1979年式。そして当時の日本総代理店で、実は筆者にとっては古巣でもあるコーンズ&カンパニー・リミテッドが正規輸入。かつては世界屈指のフェラーリ・コレクションを誇った「松田コレクション:フェラーリ美術館」に所蔵されていたという、由緒正しい個体である。

 この日は、撮影に際してドライブを堪能するという栄誉に浴したのだが、そのフィールはただただ感動的という言葉に尽きる。V型8気筒エンジンは低回転域からトルクフルな一方、いわゆる「カムに乗る」4000rpm以上の回転域では電光石火のごときレスポンス。また、スロットルを踏み込むと聞こえてくるウエーバー製キャブレターの吸気音に、回転が高まるにつれてクライマックスに達する排気音が素晴らしいハーモニーを奏でる。

 一方ハンドリングについては、ディーノのような圧倒的な軽快感や繊細さには欠けるものの、70年代にふさわしいシュアな印象を高めている。さらに、格段にパワフルになったエンジンを利して、スロットルによるコントロールも可能。つまり、よりスーパーカー的な走りも味わえるのだ。

 とはいえ、これらのインプレッションも「クラシック・フェラーリを自らの手で操る」という圧倒的な感動の前には、なんらの意味も持たないかもしれない。フェラーリ、とりわけクラシックモデルは、それほどまでに特別な存在。スーパーカーというジャンルの素晴らしき古典なのである。


>> 【画像14枚】装着されているのは、クロモドラ社製に切り替わる前、カンパニョーロ社製14インチアロイホイールなど




>> ディーノGTを巧みにモダナイズしたデザインがよく分かるプロフィール。フィオラヴァンティのデザイン能力の高さを感じさせる。


INFORMATION


高梨慎太郎さん(写真)主宰のアルティメット・モーターカーズは現代スーパーカーのスペシャリストである一方、S30Zなど国産旧車も得意とする。



1979年式 フェラーリ 308GTB(日本仕様)

SPECIFICATION 諸元
全長×全幅×全高(mm) 4350×1730×1150
ホイールベース(mm) 2340
トレッド前/後(mm) 1460/1460
車両重量(kg) 1440
エンジン種類 V型8気筒DOHC
総排気量(cc) 2926cc
最高出力(ps/rpm) 205/6600
最大トルク(kg-m/rpm) 25.0/5000
ボア&ストローク(mm) 81×71
圧縮比 8.8:1
変速機 5速MT
サスペンション 前後ともウイッシュボーン+コイル
ブレーキ形式 前後ともベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ 205/70VR14



初出:ノスタルジックヒーロー 2017年8月号 Vol.182
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1979年式 フェラーリ 308GTB(全3記事)

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【1】【2】から続く

text:HIROMI TAKEDA/武田公実 photo:MOTOSUKE FUJII/藤井元輔

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