「いや、ビニールトップはもしかしたらいいかも」見たのは1枚の写真だけ 〜2016〜|1972年式 ダットサン 510 ワゴン Vol.2

シェイファーさん自作のキャンバス製スライド式のサンルーフもよく似合っていた。「想像以上の仕上がりで、雨漏りもなし」だそうだ。

       
【1972年式 ダットサン 510 ワゴン Vol.2】

【1】から続く

 2カ月のインターネットのクルマ検索の末、緑色の1台がスクリーンに現れた。すぐに売り主に連絡をして話を聞く。その後もたびたび電話をしてクルマの状態を確かめること1カ月。シェイファーさんは当時を振り返る。

「見たのはたった1枚の写真だけ。2002年にはデジカメも普及していなくて、わざわざ写真を撮ってスキャンするなんて売り主には面倒だった」

 いつの間にか心は緑のワゴンにくぎ付けだ。この1台しかあり得ない。覚悟を決め、手に入れたのはワシントン州シアトルまで飛行機の片道切符だった。

「240Zで空港へ迎えにきてくれた売り主は、510ワゴンは飼い犬を散歩に連れて行くのに使っていたクルマだと説明してくれました」
 走行距離わずか7万6千マイル、程度はいい。ただビニールトップがひどく傷んでいたのにがっかりしたという。


▶▶▶【画像13枚】張り替えの際にGM車用のパーツを流用したボディ上部を覆う黒いビニールレザートップなど


「取っちゃえばいいかと思ったけど、そのうち心の中にムクムクと『いや、ビニールトップはもしかしたらいいかも』そんな気持ちがわいてきたんです」

 一度試運転をしたら、もうためらうことなどなかった。シアトルからソルトレイクシティまでは850マイル。走りきれるか保証できないよ、という前オーナーの言葉を尻目に、フリーウェイの入口を通過し、向かう先には足掛け2日、16時間の連続高速走行。ラジオもなく、うなりをあげる4速ミッションの音をひたすら聞き続けた。



張り替え済みの清潔な前席シートも手伝って、運転席はノーマルな印象。グローブボックスの記されたサインを、「ピート・ブロックとジョーン・モートンがこの座席に座ってサインしてくれたんです」と興奮を思い出す様子で説明した。



【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 2月号 vol.173(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 ダットサン 510 ワゴン(全4記事)

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【1】から続く

text & photo:HISASHI MASUI/増井久志 photo support:MILES SCHAFFER/マイルス・シェイファー

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