初代シティベースで始まった開発。最終的に原形を残さないほど改良されたエンジン|1991年式 ホンダNSX  Vol.2

リアウインドーを開け、タイプR純正のメンテナンスリッドを上げると、エンジンルームにアクセス可能。横置きされたV型6気筒のVTECエンジンがコンパクトに収まっている。

       
開発に約7年を費やし、前例のない総アルミモノコックボディを実現した日本初のスーパーカー、NSX。ホンダがターボエンジンでF1を席巻し、日本中がターボ車であふれていた時代に、あえてNAエンジンを搭載した。そんなホンダNSX開発陣による横置きNAエンジンへのコダワリとは。

【1991年式 ホンダNSX  Vol.2】【1】から続く

 もともと初代シティベースで開発が始まったが、レジェンドベースの2.7LV型エンジンの搭載が決まると現場主導で開発が進み、最終的に原形を残さないほど改良されたV6 3LのNAエンジンに決定した。

 もちろん開発の過程で多くのエンジンレイアウトがテストされ、縦置きのターボ搭載も検討された。しかしながら、よりコンパクトにパッケージングし、軽量化を優先。ターボ全盛の時代にあえて横置きNAエンジンを選択したことが、NSXのコダワリ。そして、この選択がホンダ=NAエンジンというイメージの拡大へとつながった。

 エンジンが定まると、それを生かすボディとして世界初となる総アルミモノコックボディを採用。今でこそ当たり前のように使うニュルブルクリンクでのテストを、日本のメーカーとしては初めて実施。開発にはF1ドライバーのアイルトン・セナ、中嶋悟も参加。特にセナが指摘したボディ剛性は修正が図られた。こうして、プロジェクト始動から7年目の1990年9月、NSXは発売されることになる。

 NSXが独特であったのは開発過程だけではない。今までのホンダに例のない機構を多く持ち、全体の約66%の組み立てを手作業でしなければならないこのクルマのために、専用となる高根沢工場を新たに建設。さらにアルミを溶接するスポットガンまで開発した。

 生産に手間のかかるNSXの日産台数は、わずか25台。そして販売価格はスカイラインGT‐Rが400万円だった時代に800万円と、スポーツカーとして他に類を見ない存在として、発売当時クルマ専門誌だけでなく、女性誌やテレビ企画などで取り上げられ、日本のみならず世界中で話題となり、ハリウッド映画にも出演。

 ホンダはNSXの登場によって、スポーツカーメーカーであると世界に認められたのだった。


【画像14枚】飾り気のないシンプルなコクピット。オーナーの手により、シフトノブの前に作られたiPhoneを設置できるパネルなど



開発に約7年を費やし、前例のない総アルミモノコックボディを実現した日本初のスーパーカー、NSX。





シフトノブの前にはiPhoneを設置できるパネルを装着。電源を確保するとともに、オーディオにリンクしており、音楽をカーオーディオで聴くことができる。




シートはFD3S RX-7の純正レカロシートに変更。シートレールはブリッドでワンオフしてもらったもの。


1991年式 ホンダNSX (NA1)
SPECIFICATIONS 諸元
全長×全幅×全高(mm) 4430×1810×1170
ホイールベース(mm) 2530
トレッド前/後(mm) 1510/1530
車両重量(kg) 1350
エンジン型式 C30A型
エンジン種類 V型6気筒DOHC
総排気量(cc) 2977
ボア×ストローク(mm) 90.0×78.0
圧縮比 10.2:1
最高出力(ps/rpm) 280/7300
最大トルク(kg-m/rpm) 30.0/5400
変速比 1速 3.071/2速 1.952/3速 1.400/4速 1.033/5速 0.771/後退 3.186
最終減速比 4.062
ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション 前後ともダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前後ともベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後205/50ZR15・225/50ZR16
発売当時価格 800.3万円


初出:ハチマルヒーロー 2014年 02月号 vol.24(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1991年式 ホンダNSX (全2記事)

関連記事: NSX

photo : HIROTAKA MINAI/南井浩孝

RECOMMENDED

RELATED

RANKING