いくら気をつけていても、トラブルは予期せず訪れる「何がなんでも、この名機を後世に残したい」|1972年式 日産 スカイライン 2000GT  Vol.4

TC24-B1を2基購入したツワモノ、瀕死のエンジンブローからの復活劇!!

       
【1972年式 日産 スカイライン 2000GT  Vol.4】

【3】から続く

 元祖TC24-B1への換装したエンジン本体のみならず、補機類、駆動系まで手を入れたハコスカ。水温・油温管理も万全だ。

ところが、いくら気をつけていても、トラブルは予期せず訪れる。イベントに参加するため、岡山から富士スピードウェイに向かうロングドライブ中に、エンジンが突然ストップ。インテークバルブのうちの1本が折れて燃焼室内で暴れ、ヘッドからピストン、ブロックまで、エンジン構成パーツの大半にダメージがおよぶ重傷となった。

 通常なら、迷わず廃棄する状態だが、「何がなんでも、この名機を後世に残したい」というオーナーの強い熱意が伝わり、トミタクさんが再生を決意。ピストン、コンロッド、クランクはそのまま使えたが、クランクとブロックは新たにL28型用を調達。致命的なダメージを負ったヘッドの燃焼室部分は、いったんアルゴン溶接で完全に埋め、燃焼室の形状やプラグホール、バルブシート、吸排気の通り道となるポートなどを、イチから製作し直していった。

 前代未聞の大手術は、2週間ほどのあいだ、ほぼ不眠不休で続けられ、ついに修復に成功。復活を遂げてからすでに5年が経過し、2万kmを走破したが、今なお快調に走り続けている。ただし、大きなトラブルを経験したからといって、片岡さんはアクセルを踏む力をセーブしたり、走行を控えたりしようなどとは微塵も思っていない。今まで以上にこまめな点検とメンテナンスを心がけ、良好な状態を維持しながら、愛車&愛機をまだまだ進化させていきたいと目論んでいるのだ。

OWNER’S VOICE

 貴重な元祖TC24-B1ながら、過保護に保管しておくのではなく、潜在するポテンシャルを最大限に引き出すためにさらなるチューニングを施し、愛車のハコスカに搭載して楽しんでいるオーナー。

 ロングドライブからワインディング、サーキット走行まで、さまざまなステージで積極的に走り込んでいる。特に、マフラーはサイレンサーのサイズやパイプ径、独自のチューニングなどによって、ステージ1~3までの3タイプを用意。ストリート、イベント、サーキットと、目的に合わせて使い分けるほどの強いこだわりを持っている。


最新パーツでもいいものは積極的に取り入れるのがモットー。リスタード製のカーボンボンネットや、スターロード製のマスターバック&マスターシリンダーも導入。HIDバルブのヘッドライトなど【写真29枚】



DIYや細かな作業を得意とする片岡さんの遊び心が表れている車台プレート。機関型式が「TC24-B1」と記されるほか、最高出力は「MONSTER」となっている。





OS技研の刻印の入るヘッド。





TC24-B1を2基購入したツワモノ、瀕死のエンジンブローからの復活劇!!



1972年式 日産 スカイライン 2000GT(GC10)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:白(ボディカラー)、テールレンズ黄色加工、ギャラクシー製HID
■エンジン:L28型改3L仕様、OS技研TC24-B1(81年式/シリアルナンバー11番)、ボアφ89mm×ストローク79mm(圧縮比11.5)、OS技研製カム(320度、10.5mmリフト)、バルブサイズ(INφ35.5mm、EXφ30.8mm:TC24-B1専用設計)、ホンダN360用バルブスプリング、コッター、リテーナー(当時のOS技研純正)、OS技研製鍛造φ89mmピストン(トミタクSPL)、SAENZ製H断面コンロッド、L28型用クランク(タフト加工)、ウエーバー55DCO1/SP、長瀬発動機製φ48mm等長タコ足(6-1)、φ80mm→φ90mmシングルマフラー
■点火系:永井電子機器製MDI、ワンオフプラグコード
■燃料系:ボッシュ製燃料ポンプ(ポルシェターボ用)
■冷却系:アルミ3層ラジエーター、アールズ製オイルクーラー
■駆動系:OS技研製トリプルクラッチ、5速フルクロスミッション、スーパーロックLSD(ファイナル4.3)、大容量アルフィンカバー
■サスペンション:ビルシュタイン製車高調改(F)8kg/mm (R)23kg/mm
■ブレーキ:(F)純正オプションMK63/スターロード製マスターバック&シリンダー
■インテリア:Defiφ115mmタコメーター、φ60mm油圧、油温、水温計、スタック製燃圧計(電気式)、ブリッド製ヒストリックス/ダッツンコンペステアリング
■タイヤ:アドバン ネオバAD08 195/50R15
■ホイール:RSワタナベ(マグネシウム)(F)15×8J ±0 (R)15×8.5J -6


初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 スカイライン 2000GT (全4記事)

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text:HIROSHI SHOUMATSUMOTO/正松本 宏 photo:RYOTA-RAW SHIMIZU/清水良太郎

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