ターボパワーとエアロボディで戦ったスカイライン・ターボ|日産 スカイライン JSS スペック DR30 Vol.2

ボンネットに設けられたエアアウトレット。インタークーラーとラジエーターを冷却した空気がここから吸い出される。フロントブリスターフェンダーの張り出し量も適量。ボディラインになじみ後付け感がない。全体のバランスがよいことは上の外観写真が示しているとおり。

       
【日産 スカイライン JSS スペック DR30 Vol.2】

1980年あたりまではF2と富士GCシリーズが引っ張ってきたトップカテゴリーのレースは、1979年に始まった「スーパーシルエット」(シルエットフォーミュラ=グループ5)レースが台頭し、日産トリオ(スカイライン、シルビア、ブルーバード)の揃った1982年にピークを迎え、爆発的な人気となっていた。

 もともとは富士GCシリーズのサポートレースとして開かれていたが、ファンの人気はいつしか逆転し、シルエットフォーミュラ見たさにサーキットへ集まる状態となっていた。

 その理由は言うまでもなく、思い切り派手でダイナミックな外観と、ハイパワーターボエンジンによる強烈な加速スピードによるもので、減速時に排気管から吹き上げる炎がレースの迫力を倍増させていた。

 それからもうひとつ、これは当時の自動車ファンでなければ分かりにくい感覚だが、身近にある市販車の外観をエアロパーツでモディファイしたカッコよさ、という理由があった。というのも、当時の道路運送車両法が四角四面の法律で、外観やメカニズムの変更・改造を一切認めていなかったためである。法律的にはミラー1個替えられない時代に、大型のバンパースポイラーやウイング、ブリスターフェンダーで外観を飾り立てたわけだから、ファンにとってはまさに「憧れ」の存在となっていたわけである。

 だが、人気を誇ったシルエットフォーミュラも、グループCカー規定の導入で新たなスポーツカーレースが創設されると、メーカー系の主力エントラントがそちらに移行し、一気に終息の方向へと向かっていったのである。

 しかし、ここからが話の本筋となるのだが、派手な外観に人気が集まるなら、なにもシルエットフォーミュラ規定でなくても、市販車にエアロパーツを装着した車両で同じようなレースが出来るのではないか、と考えるようになっていた。

 幸いにして、1980年代も中盤にさしかかる頃には市販車のターボ技術が大きな進歩を遂げ、レーシングカーも簡単に大パワーを得られるようになっていた。シルエットフォーミュラ並みとはいかなくても、レースファンの期待に応える程度のスピードならば、らくらくと確保できた。そしてなにより新しいレースカテゴリーを創出できるという理由から、JSSレースが発案されたのである。



6気筒スペースに4気筒のFJ20型を積み込んだことで思いのほかシンプルに見えるエンジンルーム。ラジエーター直後の大型インタークーラー、径の太いエキゾーストマニホールド、そして大きなタービンハウジングが高出力型であることをうかがわせる。


キャビン内に張り巡らされたロールケージ。しかしピラーやルーフとの接合部はなく、ボルト結合による組み立て式となっている。1991年まで使われた車両だがこのロールケージ形式はそれよりはるかに前のものだ。


タコメーターを中央に、その両脇に油温、排気温、油圧、水温の各メーターを配置。クラスターの外側、ダッシュボード中央に独立して設けられているメーターがブースト計。メーターパネルはDR30のオリジナルを使用しているがJSSだとこの部分は自由なはず。むしろこうしたあたりにグループA車両の名残を感じることになる。

初出:ハチマルヒーロー Vol.17 2012年 1月号(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

6気筒スペースに4気筒のFJ20型を積み込んだことで思いのほかシンプルに見えるエンジンルームなど【写真4枚】

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text:Akihiko Ouchi/大内明彦 photo : takashi Ogasawara/小笠原貴士 

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