盲目のGT-Rオーナー【2】自分流のアイデアで、友人たちとともに楽しむハコスカGT-R|1971年式 日産 スカイランHT 2000 GT-R vol.2

運転ができない代わりに、小さなパーツの交換やボルト類の増し締め、お手入れなどに気を配って楽しんでいる

【ハコスカとケンメリ|1971年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-R Vol.2】
【1】から続く

たとえ運転はできなくても、GT-Rは楽しめることを、オーナーは身をもって伝えてくれた。エンジンをかけて、S20型エンジンの高まりを聞くだけでも気分は晴れる。
「例えていうなら、L型エンジンの音は『ボッ』。それに対してS20型エンジンの音は『バッ』っという感じでしょうか。L型のは野太い調子なのですが、S20型のほうはエンジンの回転を上げていくに従って、高音になっていくのが特徴です」

【画像20枚】キャブレターは純正ソレックス40PHHのファンネル仕様。調子は抜群で、アイドリングから高回転までスムーズに吹け上がる。リアにはワークスタイプスタビライザーを装着。GC10のマイナーチェンジで登場したハードトップは、セダンからホイールベースを70mm、全長を65mm短くしたことにより、コーナーリング性能が高められた

盲目のミュージシャンの耳はすごくいいという話を聞いたことがある。そこでオーナーにL型とS20型の音の違いについてたずねたところ、そういうコメントだった。GT-Rであることを強く感じるエンジン音には強い関心があり、エキマニを現在のφ42.7mmの6-2から、φ38mmの6-1集合に変更するプランも検討しているそうだ。


>> S20型エンジンの上を横切るタワーバーはオーナーがデザインし、友人がワンオフで製作。RSスタート製アルミ2層ラジエーターの左側に設置されたリザーバータンクのキャップは、オイルフィラーキャップのメッキを剥がし、Rの文字を入れたワンオフ。



>> エキゾーストマニホールドは、RSスタート製のφ42.7mm等長ステンレスの6-2タイプを装着する。


そして、もう1つのGT-Rの楽しみが、お手入れ。各部のボルトをステンレス製に交換する際、自作のゴムパッキンを塗装面との間に挟んだり、オーバーフェンダーをボルト留めに変更することで、オーバーフェンダーを外して掃除できるようにするなど、自分流のアイデアでGT-Rを維持して楽しんでいる。「クルマもオーナーさんたちも、1台1台、一人一人個性が違いますが、その違いがまた面白いんですよね」と、やりたいことにちゅうちょせず、GT-Rと生涯をともにする覚悟を決めている。

また、ボルト類の交換やパーツ交換なら、手探りでもなんとかなると、いじることも実戦する。具体的には、ガレージの一角に置いたラジオの音から「そこがガレージの端、手前にGT-R、左の壁沿いに工具置き場」と、愛車と工具の位置関係を記憶し、工具片手にボルトをゆるめていくそうだ。ボルトのサイズは、5円硬貨の穴を通る太さかどうか、1円硬貨何枚分の長さになるか、1円硬貨の直径より長いかなどで確認するらしい。ただし、手をすべらせてボルトを落としてしまうこともある。
「自分で探すことはできないので、落とした場所、転がって行った音の方向を覚えておいて、だれかが遊びに来た時に代わりに探してもらいます(笑)」と、おおらかさも身につけた。

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【3】に続く
1971年式 日産 スカイラインHT 2000GTーR|ハコスカとケンメリ(全3記事)
初出:ノスタルジックヒーロー 2021年2月号 Vol.203
       (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
関連記事:ハコスカとケンメリ

text : Akio Sato/佐藤昭夫 photo : Motosuke Fujii(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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