魔法の絨毯と称された、ソフトな乗り心地【3】1973年式 ランドローバー レンジローバー

高級シューティングブレーク(狩猟用ワゴン)としての使用も見込まれたためか、テールゲートは上下に開くスタイル。これは現在でも、レンジローバー各モデルに踏襲される

       
現代の自動車業界で、最も人気の高いカテゴリーとなったSUV。アメリカのフォード・ブロンコなどとともに、
このカテゴリーのパイオニアとなったレンジローバーは、イギリスの伝統的富裕層のリクエストから生まれたモデルだった。


【輸入車版懐古的勇士 1973年式 ランドローバー レンジローバー Vol.3】

【2】から続く

 今回の取材にご提供いただいたレンジローバーは、初期モデルに相当する1973年式。英国の富裕層を端緒に、その名声を確立し始めた時代の一台である。初代レンジローバーのドライブフィールを示す言葉として知られる「魔法の絨毯」を、最も純粋に体現した時代のモデルとも言えるだろう。

 今回はさすがにオフロード走行を試す機会まではなかったが、舗装路ではソフトでストロークの長いサスを生かして快適無比。スペン・キングが崇拝した、シトロエンDSを思わせる乗り心地を示す。またV型8気筒エンジンの分厚いトルクにより、かなりハイスピードな街中の流れも軽々とリードできる走りっぷりも披露する。いささか騒々しかったランドローバー4気筒モデルとは違って、柔らかなV8ビートを刻むサウンドも、実に好ましい。

 日本でも大人気を博した1980年代末以降のレンジローバーと比べて、この時代、ごく初期のモデルは輸入された数も圧倒的に少なく、筆者もこれまで触れる機会はなかったのだが、今回の取材により初期型レンジローバーが、60〜1970年代初頭に、例えばロールス・ロイスやベントレーなどを愛用していた階層の審美眼にも十分にかなう、真の高級車たることを確認できた。

 かつて、故・小林彰太郎さんなど真のコニサー(通人)たちがあこがれ、愛したレンジローバー。そんな歴史を感じさせる一台に触れられたことには、感激の思いを禁じえないのである。


>> 【画像18枚】この時代の英国車でおなじみのロシュタイル社製スティールとなるホイールなど。柔らかくストロークの長いサスと相まって、乗り心地は最上



>> もともと北米GMで開発されたのち、ローバーに譲渡されたV型8気筒OHV3.5Lエンジン。今世紀初頭まで活躍した名機だ。






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[UK CLASSIC FACTORY]代表:勝見祐幸さん
2001年に独立し都内で人材会社を経営。英国車好きが高じ2015年に自動車事業を開始、自ら英国で買い付けを行っている。




初出:ノスタルジックヒーロー 2018年8月号 Vol.188
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 ランドローバー レンジローバー(全3記事)

シリーズ: 輸入車版懐古的勇士

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【1】【2】から続く

text:HIROMI TAKEDA/武田公実 photo:DAIJIRO KORI/郡 大二郎

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