試作車なの!? なぞがいくつもあるS50最初期モデル|1964年式 プリンス スカイライン 1500 デラックス

独特な6角形のナセルを持ち、中央にスピード、左に燃料、右に水温の各メーターを配置する。

       
1957年4月、プリンス自動車工業は新型車プリンススカイラインを発売した。それから60年、今なおスカイラインは日本を代表する乗用車として、人々の心をつかんでいる。今回のスカイライン特集では4代目C110、3代目C10、2代目S50系、そして初代ALSIの各モデルを掲載。それぞれ個性的な個体を集めて、モデルごとの魅力を改めて探ってみることにした。クルマ好きはなぜ、スカイラインにひかれるのだろう。

【1964年式 プリンス スカイライン 1500 デラックス Vol.2】

【1】から続く

 取材車両の1500デラックスは書類上、初度登録は昭和39(1964)年となっているが、プリンス車に詳しい複数の人たちが個体の細部を確認して時代考証したところ、昭和38(1963)年式車の特徴が随所に見られたという。

 ということは発売直後に売られた個体であると想像できるのだが、話はそれで終わらない。いわゆる量産モデルとはいくつも違うつくりの部分があるのだ。

 ではその、なぞがいくつもあるS50最初期モデルを見ていこう。

 旧車オーナーたちが経験している、部品番号が同じでも微妙に違うパーツが来てしまった、という程度ではなく、明らかに形状や取り付け方法などが異なるものが、この1500デラックスには装着されている。その極め付きが車台番号の打刻位置だ。通常S50系の車台番号は助手席側のサイドシル上に打たれているのだが、この個体は助手席の真下、左右方向に通っているサポートビームに打たれている。プリンス車をよく知る人たちも初めて見たと言っているところをみると、どうやら試作車かそれに近い時期に組み立てられた個体のようだ。


>>【画像35枚】Dやyの文字の奥がくり抜かれているか、いないかの違いが見られる。取材車両とその後のモデルで、比較したエンブレムなど


 そしてフロントロワグリル、バンパーアッシー、ロワバーアッセンブリーの形状が後のモデルと異なり、左右のフェンダーミラーも足の上部に突起がある。さらに生産ラインの様子が想像できるものとして、トランクリッドパネルが1枚もののプレスではなく、後端の部分に別パーツを付けた処理になっており、リアドア内側のパネルは溶接スポットだけでなく、手作業による表面処理がなされた形跡があるのだ。

 いずれにしても、当時の設計者や生産ラインの職人たちが、量産に向けてあれこれ議論し、試行錯誤しながら仕事をしていたことがうかがえる。
 一瞬、プリンス自工の村山工場の、油の焼けたにおいをかいだ気がした。


OWNER’S VOICE/往時をしのび、なぞを解くのも、いと楽し

 今回の希少な仕様のS50D-1のオーナーは、歴代スカイラインをはじめ多数のクラシックカーを所有している方。プリンスガレージかとりを介して今回手に入れたこの個体は、マニアにとって往時をしのぶ1台であることは間違いない。




バンパー奥のロワバーアッセンブリーの形状。(上)取材車両(初期型)数点のパーツを組み立てて成立。(下)量産型では一体成型となっていて、簡素化されている。






(上)取材車両(初期型)では、給油キャップのキーホールのふたが横スライド式。
(下)量産型では、給油キャップは片ヒンジで上下開閉式となる。





左右のテールレンズの表面の形状が違う。(上)取材車両(初期型)は赤1色で浮き出しのラインのみ。(下)量産型ではシルバーのライン入り。



1964年式 プリンス スカイライン 1500 デラックス(S50D-1)
SPECIFICATIONS 諸元
全長 4100mm
全幅 1495mm
全高 1435mm
ホイールベース 2390mm
トレッド前/後 1255 / 1235mm
最低地上高 175mm
車両重量 960kg
乗車定員 5名
最高速度 135km / h
登坂能力sinθ 39%
最小回転半径 4.85m
エンジン型式 G1型
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量 1484cc
圧縮比 8.3:1
最高出力 70ps / 4800rpm
最大トルク 11.5kg-m / 3600rpm
変速機 前進3段 / 後退 1段 オールシンクロメッシュ
変速比 1速 3.093 / 2速 1.648 / 3速 1.000 / 後退 3.978
最終減速比 4.444
燃料タンク容量 40L
ステアリング形式 リサーキュレーティングボール式
サスペンション前/後 ウイッシュボーンジョイント式・コイルスプリング / 半浮動式・半楕円板バネ
ブレーキ前後 ともデュオサーボ
タイヤ前後 とも5.60-13-4PR
発売当時価格 73万円

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年2月号 Vol.179(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1964年式 プリンス スカイライン 1500 デラックス(全2記事)

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【1】から続く

photo:TAKASHI AKAMATSU/赤松 孝

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