1968年7月にファミリアロータリークーペ、1969年10月にルーチェロータリークーペ、1970年5月にカペラ ロータリーセダン&クーペ、そして5番目のRE搭載車種として71年9月にデビューしたのが、サバンナだ。
【1975年式 マツダ サバンナ AP GT Vol.3】
【2】から続く
サバンナの中でも、今回の取材車両は1975年9月に初度登録されたサバンナAP GTとなる。
APは、50年排ガス規制に適合したREAPS4の12A型エンジンを搭載している。
左からサイドブレーキ・ウオーニング/水温計、電流計/燃料計、時計の順となるコンソール中央の3連メーターなど【写真28枚】
オーナーが40年間持ち続けているワンオーナー車で、ボディのレストアやエンジンオーバーホールもしていない、実走9万3000kmの極めてオリジナル度の高い個体だ。
「私は『直感、サバンナ。』のキャッチフレーズが気に入りました。最初は前期マスクでブラックのGTが欲しかったのですが、京滋マツダに買いに行ったら、マイナーチェンジ後のモデルしかありませんでした。当時、AP車のため、自動車税が15%ほど安かったのを覚えています」
オーナーは輸入、国産のスポーツカーをはじめ、今も十数台の4輪車と多数の2輪車を所有。しかしサバンナへの愛情は別格で、特別な配慮を持って維持してきている。
「雨の日はできるだけ乗らず、ワイパーもフロントガラスにキズが付くので、極力使わない。1週間に1回は必ずワックスがけをするなど、とても大事にしながら乗ってきました。ただしAP車はエンジンをふかした後でアフターバーンが発生しやすいのが難点です」
車検整備も含めて、すべて自分でメンテナンスしていて、純正エアコンも取り付けたとか。サバンナと向き合ってきた時間は、決して他人が割って入ることができない価値あるものなのだ。
OWNER’S VOICE
「タイヤ交換時には、パンタジャッキをかける場所にキズが付くのがいやなので、必ずダンボールを当てて作業します」とオーナー。その徹底ぶりは半端ない。
BACK GROUND/新しいパワーユニットに、ふさわしいネーミング
アフリカの大草原に由来する「サバンナ」のネーミング。自由奔放に疾走する猛獣の野性美を、全身にロータリーパワーを秘めた、新しいロータリー専用車に生かした、と当時、東洋工業が発行した「サバンナの企画書」という資料の中に書いてあった。また、最初の蒸気船、最初の原子力商船がともに「SAVANNA号」を名乗っていて、新しいパワーユニットの利用とともに使われたネーミングだった。それは新しいロータリーエンジン専用車にふさわしいということで採用された、と記してある。当時のマツダの開発エンジニアや商品企画の担当者たちは、新型車サバンナに明るい未来を見いだしていたに違いない。クルマとは本来、皆を幸せにするための商品なのだ。
左からサイドブレーキ・ウオーニング/水温計、電流計/燃料計、時計の順となるコンソール中央の3連メーターなど【写真28枚】
ロータリーエンジンの排ガス対策システムの愛称であるREAPS(リープス)。取材車両は12A型REAPS4搭載車で、燃費も改善された仕様となっていた。以前はデスビが2個あったが、1個になったのが特徴。
バルクヘッドに付く型式プレート。型式がS124ABとなる。
AP車の象徴でもある横長エンドのマフラーは、内部に穴が開いたため、取り外してバラバラに分解。穴埋め後、再度組み立てている。
1975年式 マツダ・サバンナAP GT(S124AB)
SPECIFICATION 諸元
全長 4075mm
全幅 1595mm
全高 1355mm
ホイールベース 2310mm
トレッド前/後 1310/1300mm
最低地上高 160mm
車両重量 935kg
乗車定員 5名
最高速度 190km/h
登坂能力(tanθ) 0.72
最小回転半径 4.3m
エンジン型式 12A型
エンジン種類 水冷2ローター・ロータリー
総排気量 573cc×2
最高出力 125ps/7000rpm
最大トルク 16.2kg-m/4000rpm
変速機前進 5段/後退1段
変速比 1速 3.683/2速 2.263/3速 1.397/4速 1.000/5速 0.862/後退 3.692
最終減速比 3.727
燃料タンク容量 60L
サスペンション前/後 ストラット式独立懸架/車軸式
ブレーキ前/後 ディスク/リーディング&トレーリング
タイヤ前後とも Z70-13-4PR
発売当時価格 106.4万円
初出: ノスタルジックヒーロー 2015年 12月号 vol.172(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
1975年式 マツダ サバンナ AP GT(全3記事)
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